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安彦考真が40歳でJリーガーを目指す理由「サッカー選手は個人競技のアスリートの姿勢を見習うべき」

 トレーニングや遠征にかかる費用をクラウドファンディングによって工面しながら、本気でJリーガーになろうとしている男がいる。安彦考真、40歳。2018年3月現在、J2所属の『水戸ホーリーホック』に練習生として参加している。

 周囲から「年齢的にも選手としてはとっくにピークを過ぎている」、「プロを甘く見るな」などと言われながらも、“世界初のクラウドファンディングJリーガー”としてメディアから注目を集めた。

 ブラジルへのサッカー留学、現地チームとのプロ契約ののち、23歳で現役を引退。その後は『大宮アルディージャ』の通訳者、『東京ヴェルディ』がサポートするサッカースクールの監督・指導者などで活躍し、サッカー界では裏方として知られた存在であった。そんな彼が、これまでの地位や安定した収入を捨て、アラフォーにしてプレイヤーを目指した理由とは? 本人を直撃した。

安彦考真

クラウドファンディングを始めた理由


「不登校児を中心に受け入れている中央高等学院のサッカーコースにて、総監督兼講師として活動し始めた頃、生徒と向き合うことで自分自身をよりハッキリと見ることになったんです。素直な生徒たちに触れていると、嘘をつけないというか、自分自身のメッキが剥がれていくんです。僕が変な“知識”だけでものを言ってしまうと、ダイレクトに受け止める彼らはいろいろと動いてしまう。きっと戻りたくないんですね、不登校だった自分に。だから、頑張ってアクションするし、僕との信頼感も培いたいから、言われたことをモロに実践しようとする」

 間違いがないよう、“知識”だけではなく“実体験”を元に授業していたが、肝心の“実体験”という貯金はいつか尽きる。本で得た知識ばかりが多くなってしまったと悩み始めた頃のこと。

「クラウドファンディングとかベーシックインカムの話をし、将来こんな社会になるんじゃないだろうかと、僕なりの頑張った知識で進めたんです。すると、しばらくして生徒の1人がクラウドファンディングで目標を達成したんです。百聞は一見に如かずで、やった彼に俺はもう勝てないよねって。講師として、何を言えるのだろうと思ったんです」

 実体験でものを語れていないと痛感した。さらに同時期、お金に縛られている自分にも気付く。

「独立以降、まぁまぁの家賃の東京タワーが見えるマンションに住んでいて。気付いたら、自分がしたい仕事を、その家に住むためにしちゃっていたんです。目的と手段が変わっていた。子供達の未来を良くしたいとか、サッカー界をより発展させたいと思ってきたのに、優先的に僕を縛っているのはお金になっていた。例えば、生徒たちのためになることでも、学校関係者に気を使って言えない状態。僕が色々口を出してクビになったら……。ビビっていたわけです」

安彦考真 ブラジルから帰国後、清水エスパルスとサガン鳥栖の入団テストを受けるチャンスがあった。しかし、周囲のテスト生のレベルの高さに萎縮してしまい、満足な結果を得られなかった記憶がよみがえる。

「このまま終わったら、あのときの自分と同じじゃないか……」

 自問自答を繰り返し、彼はもう一度リスタートを決意する。

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可能性はフィフティフィフティだ

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