更新日:2022年12月28日 18:21
スポーツ

サッカー代表、中島翔哉の落選に騒然。若いスターを敬遠する日本社会そのもの

トルシエ元監督が懸念する、日本的ナショナリズムの自己満足

 さて、このような状況を踏まえてフィリップ・トルシエ元代表監督(63)の最新インタビュー(『Number Web』5月20日配信)を読むと、さらに絶望が深まる。 トルシエ 今回の監督交代劇について、トルシエ氏が「西野氏にナショナリズムの要素を託したのではないか」との仮説を打ち立てているからである。ハリル氏を追い出したのは、「日本人の手だけで日本の国旗を高く掲げる」意向が働いたからなのではないかというのだ。  もっともトルシエ氏は「そんな理由であってほしくはない」としているが、田嶋幸三会長(60)の「いまこそ日本サッカー界が蓄積した英知を結集していくとき」というコメントや、「日本人のDNAでやれることはもっとある」と言い放った西野監督の精神性と奇妙に合致している点は見逃せない。  もし不幸にもトルシエ氏の推理が当たっていて、ナショナリズムを満足させるために実務に不具合が生じてしまったのだとしたら、もう目も当てられない。もはやサッカー協会の批判だけでは済まなくなるからである。  日本的な精神による、日本的な失敗。もちろん、ここから奇跡的に本戦を勝ち進む可能性もゼロではない。しかし、それと神風を待ち望むことと、一体何が違うのだろう?  たかがサッカー、されどサッカー。今回の代表騒動は、思いのほか大きな問題提起となりそうな気がする。<TEXT/石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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