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日本に本格的プロeスポーツチーム誕生「世界に取り残されるわけにはいかない」

 韓国有数のeスポーツチーム「Team MVP」が突然、日本に「Team MVP Japan」を設立することを発表した。Team MVPは、eスポーツ先進国・韓国において、他の強豪チームのように財閥系企業からの支援を受けず、独立採算制で運営されてきた先鋭集団だ。これまでの獲得賞金は600万ドルに達し、世界ランキング16位にしてアジア4位という名門プロチームがなぜ、このタイミングで日本進出を考えたのか。流行語大賞にノミネートされるなど今後大きく成長しそうな「eスポーツ」でなにが起ころうとしているのか。

「Team MVP Japan」代表に就任した竹田恒昭氏は、eスポーツ黎明期からプロチームで活動し、その後の業界編成にも大きく関わってきた、日本eスポーツ界のキーパーソン。グローバルな視点でeスポーツを知り尽くす竹田氏に、eスポーツ界の見えざる現状と、プロチームの在り方について語ってもらった。

「Team MVP Japan」代表・竹田恒昭氏

プロが勝ち取る予想以上の高額報酬


――正直、eスポーツのプロと聞いても、なかなかピンと来ませんが、プロ選手はどれくらい稼げる世界なのでしょうか。

「現在、トッププレイヤーのフェイカーという選手は年俸7億円で、これはプレイヤーとしての獲得賞金だけの数字で、ネット配信などの個人的な副収入もある。たとえば海外最高峰のトップリーグは参加加盟金35億円という規模で運営されているので、上位プレイヤーはサッカーや野球の一流プロ選手と比べても遜色のない報酬を得ています。なので、他のスポーツ選手と同じような収入構造だと考えてください。陸上選手でも、100メートル走と走り幅跳びの選手では得ている報酬は違う。eスポーツも同じで、獲得賞金もゲームタイトルによって大きく上下します。選手によってはPC機器メーカーと商品コラボしたり、メディア出演で稼いでいる例もある。他の一流スポーツ選手と全く同じように関連企業からスポンサー収入も見込める、成熟した市場があります」

――ほかのプロスポーツ界と同様に稼いでいる選手がいるんですね。

「例えば今、賞金25億円の大会がある『Dota2』というタイトルのプレイヤーは平均年俸が2000万円ですから。数千万円プレイヤーは普通にいます。だって、8チームで25億円を争う大会が年に何回もあるんですよ。だとしたら、チームは利益を求めるために優秀なプレイヤーを高額報酬で集めようと思うのは当然のこと。高額賞金の大会が続々と誕生していることで、プレイヤーへの報酬も右肩上がりになっている。現状、こうした高額賞金の半分は中国のプロチームが獲得しています。中国は本当に強いです。プレイヤーがハングリーで、報酬が多くもらえるタイトルに貪欲ですね」

「Team MVP Japan」代表・竹田恒昭氏

正しい認識が求められるeスポーツ


――日本では、eスポーツでプロチームといっても具体的なイメージが浮かびません。

「獲得賞金の上位に位置するプロチームはサッカーの人気チームと何ら変わりません。合宿所なり練習施設を借り上げて、選手には年俸を保証して払い、1日何時間というタイムスケジュールでみっちり練習して管理します。世間には、『ただゲームで遊んでお金稼いでいる』と批判的な見方の人もいますが、実際のプロチームには複数のマネージャーが帯同して、練習試合の日程調整にはじまり、反省点や修正点、課題などを解析して、さらに細かい部分に渡って専門のコーチが指導するような体制が整っています。ただのゲーム好きがオンラインだけで繋がっていて世界が取れますか、ということです」

――そもそもTeam MVP Japan設立の経緯は?

「以前はチームに所属している人はいなくて、各プレイヤーが各々アルバイトで200万円貯めて海外に武者修行にいくという状況でした。そうした経験から僕自身は、有望な選手をサポートするプロチームの必要性を感じていたんです。そこで僕が2005年に設立したのが、日本初のプロチーム『4dimensioN』で、当時、ぼくらのライバルだったのが韓国の現MVPでした。そうした関係で、お互いに話しているうちに今のタイミングで一緒にやれば面白いことができると、お互いの意見が一致した結果、こうした動きになりました」

――MVPはどんなチームですか。

「eスポーツが盛んな韓国では無数のチームが存在しています。その中でも実力が突出しているのがSKテレコム、CJエンターテイメント、サムスンといった財閥系が支援している3チーム。そこに唯一、張り合っている独立採算制のチームがMVPで、韓国では三番手の位置にいる。サッカーのプレミアリーグでいえば、リヴァプールのようなポジションのクラブチームです」

――韓国と日本のプロ選手。その違いは?

「韓国はプロリーグがあり、そこで試合している選手は生活がかかっているので真剣です。背負うモノも守っているモノも違います。彼らからすれば、eスポーツは楽しいだけのゲーム大会じゃない。試合に合わせてトレーニングを積んで、戦術も研究し、その日々の中で自分の課題も消化していく……といった、どこまでもアスリート的な姿勢でゲームに接しています。プロゲーマーなら、ゲームが上手いのは当たり前。その上で、戦術や人間的な部分でチームがまとまっていないと勝てない世界です。選手寿命も十代中ごろから三十歳前後までと長くはありません。世界のトップで戦うには動体視力の衰えは不利になりますからね」

――オンラインゲーム大国といわれる韓国に比べて日本はPCゲームとの関わりが薄いと思いますが、その影響はありますか。

「そこが日本のeスポーツの発展に足りないというか出遅れている一番の要因だと思います。eスポーツといっても、世界での捉え方と日本での捉え方には大きな隔たりがある。これは、ファミコンで育ってきた日本と、PCゲームで育ってきた文化の違いでもあります。しかし、実際にeスポーツで高額賞金がかけられるのは圧倒的に後者。それが世界標準になりつつあるのに日本国内だけは、ゲーム会社の主催でゲーム大会をやって、それをeスポーツと呼ばせているのが現状ですね」

――実際に世界で強い国はどこですか?

「格ゲーは日本人が強くて、シューティングはヨーロッパやアメリカ、シミュレーションなら韓国や中国が圧倒的に強いというカラーがあります。しかし、プレイヤーの国籍というのはほとんど関係ないです。これもサッカーと同じなんですが、ランキング上位のプロチームの所属選手は国籍も人種もばらばらです。MVPも韓国人だけでチームを組むというのはナンセンスだと考えていて、これからは日本人プレイヤーも入団させつつ、インターナショナルに人材を集めていくつもりです」

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変化がなければ日本のeスポーツに進歩なし

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