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ガラパゴス化したプロゲーマーのライセンス問題 日本のeスポーツはどう変わる?

POKKA吉田&木曽崇のギャンブル放談<13>  ぱちんこジャーナリスト・POKKA吉田氏とカジノ研究家の木曽崇氏がギャンブルをキーワードに言いたい放題しゃべりまくり、斬りまくる『POKKA吉田&木曽崇のギャンブル放談』。今回は、発足以来eスポーツのプロ制度を掲げ業界をけん引してきたJeSU(日本eスポーツ連合)がターゲット。同団体の賞金問題や興業の方向性について、2人が豪快に切り込むぞ。
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日本のプロゲーマー環境は残念ながら良い状況とは言えないようで……

JeSUのプロライセンス制度と賞金問題

————世界中の大会では億単位の高額賞金が出て話題になっていますが、日本の大会では景品表示法の関係で、10万円が上限。そこをクリアするためにはプロライセンス制度が必要だとJeSUが主張しロビー活動を行ってきましたが、ここにきてようやく法的問題がクリアできたと日経新聞で取り上げられ、話題になっていましたね。 木曽崇:JeSUが提出したノーアクションレターに対して、消費者庁から正式に回答が出され、「賞金の提供が『仕事の報酬等』の提供と認められる場合には、景品表示法に違反しない」ということになりました。プロ、アマを問わず、高い技術を用いたゲームパフォーマンスはゲーム大会の競技性や興行性の向上に資するものであり、「仕事」とみなされるということです。結局、プロライセンスはいりませんでしたって話なんだよね。 POKKA吉田:選手から集めた参加料の扱いが微妙で賭博罪にあたるんじゃないかって話もあったけど、「参加料は運営費に充てて、賞金はスポンサーが提供する」と明確化できれば賭博罪にあたらないって見解も出された。けど、木曽さんはずっと「プロ制度要らない」って言い続けてたよね。 木曽崇:2018年2月にJeSUが「俺たちがプロ制度を作って、日本の賞金問題を解決するんだ」と息巻いて立ち上がった直後から、僕含めて周りの人間は「この問題をクリアするのにプロ制度は関係ないから潰せやめろ」って指摘していたことです。今回、「賞金を出すのにプロライセンスは必要ない」という消費者庁の判断をJeSUが自分たちが勝ち取った手柄として発表してて、さんざん「プロライセンスが必要だ」と主張してきたくせに態度をコロッと変えてきたもんだから、これを聞いてみんなずっこけましたね。 POKKA吉田:そういうことをする人は特に政治家に多くて、たとえば立憲民主党の高井崇志議員。ぱちんこパチスロの遊技機にベースメーターや役比モニタ(※検定通りの性能で台が回っているかどうかを計測するための装置)をつけるようになったのを「俺がやった」って議員本人は知らんけど関係者らしき人物が言いふらしてたみたいなもんでさ。すでに内々に決まってることが公表される前に質問をして、そのあと決定事項として発表されたら「俺のおかげや~」なんて言うのはアホかっていう話やねんけど。ただ、自分が成してないことを「私がやりました」ってそれらしく宣言するのは政治の世界ではよくあることやし、まあええと思うけど、JeSUみたいな民間の企業や団体が規制に関して嘘ついたらあかんわ。日経の記事では「すごいこと起きましたよ」みたいに書かれてるけど。ふつう、記事に載せるときにはチェックをせなあかんのに、デスクや編集局のチェックが漏れてたんだから、やっぱアホしかおらんのか! これだから日経は! ――日経の記事は、JeSUからもらったリリースをそのまま垂れ流しているような内容でしたけど、JeSUのこの方針転換には、伏線はあったんでしょうか? 木曽崇:JeSUは最初にブチ上げちゃった手前、この1年半ぐらい後戻りができなかったんですよ。「ブチあげますよ」ってアナウンスメントをした直後から僕に「それ間違ってません?」 ってことを言われ始め、立ち上がった直後に今度は消費者庁から「プロ・アマ関係なく賞金出せます」っていうコメントが、複数のメディアを通じてすでに出てたんですよ。それでも「俺たちのプロライセンスは必要なんだ」って強弁し続けたどころか、今度は「我々の制度は消費者庁の意向に基づいて作られた」なんて所管省庁の威光を振りかざし始める始末。で、いよいよこらえきれなくなって今の状態に至るワケですが、一体、彼らが金科玉条の如く振りかざしていた「消費者庁の意向」はどこへ消えていってしまったのでしょうか。もし本当に一連の騒動が消費者庁の意向によって起こり、業界がそれに二転三転も振り回されたのだとしたら、これは大問題でしょ。 POKKA吉田:JeSUがゲームの興業ビジネスを独占して儲けたかったっていう気持ちはわかるけど、滑稽だよね。本来、しかるべき要件を満たせばできることを、JeSUはあたかも「うちらの団体に参加していることが、大会スポンサーが賞金を提供するための要件だ」みたいな姿勢をゴリ押ししてたのよね。 木曽崇:JeSU副会長の浜村弘一さんのハッタリでここまできちゃったんですよ。『ファミ通』編集長としてゲーム業界での成功体験を持つ浜村さんが、ゲーム業界での成功体験をeスポーツに持ち込もうとしたのがまずかった。ゲーム業界って元々どちらかというとオタク産業で、みんなただただゲームが好きで、面白いゲームを作りたいっていう人たちばかりの業界。そのなかで、浜村さんみたいなハッタリだらけの山師もどきの人って今まであんまりいなかったんですよ。だから、ゲーム業界の中でだけはあの人のやり方が通用してきた。一方で、eスポーツはたしかにゲームが舞台だけど、実質的には興行だから、イベント業や広告業や芸能界などゲーム業界の人間ではない人達がたくさん関わっている。そういったなかで、浜村さんは山師としてのレベルが低すぎたということです。ハッタリこいて風呂敷広げまくったはいいけど、「そっちに風呂敷を広げたら危ない」っていう勘が働いていないですよね。 POKKA吉田:やっぱり、『ファミ通』編集長としてゲームをメディア側で仕切っていたい意識が強いんじゃないの。だから、自分がゲーム業界の中心にいて、自分の決めたビジョンやスキームは全適用になるもんだ、っていう腹でいたんだろうね。ただ、ゲーム業界から一歩出てeスポーツとなると、まったく通用しなかったってことね。 ——JeSUはどういう方向で風呂敷を広げればよかったんでしょうか。 木曽崇:法律方面に広げるのは基本NGです。究極的に判断するのは行政当局で、最終的には裁判所なので、そこを広げてもリスクにしかならないです。「俺たちじゃないと法律問題解決できないんだ」みたいなこと言いだした時点で、そりゃあおかしいよねって話にしかならないので。 POKKA吉田:そのリスクを回避するのに有効なのは唯一、「国主導でやりました」っていう体裁にすることなんだけど、JeSUはうまくやりきらなかったよね。消費者庁なり関係省庁が主導して、JeSUが外郭団体みたいな感じで動いとったら話は別やけど。消費者庁にちょっとコミットして巻き込んだ程度で、「これ国がやってます」なんて言うのを誰が信用すんねん! っつう話やわ。 木曽崇:それをみんな信用しちゃったんだけどね(笑)。安易に利権の獲得に走ったプロライセンス制度以外にも、やらなきゃいけないことはいっぱいあるので、そっちに本腰を入れろっちゅう話です。まぁでも、ずっとくすぶり続けて引くに引けなかったプロライセンス問題がここでバツンバッサリと切れたのは、良かったと思うよ。最悪の状況は脱したっていう感じですね。
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あの人たちの存在意義ってないんじゃねえの(笑)
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勝SPA!
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