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自称・未来からきたおっさんが唯一、的中させた“予言”――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第27話>

おじさんは33年後の僕だと言った

 おじさんは見るからに胡散臭い表情をして訳の分からないことを言い始めた。 「なんと、おじさんは未来のキミだ! おじさんは33年後の未来から来たんだ!」  衝撃の発言に、僕は歩みを止めた。 「おじさんが33年後の僕……?」  こんなしょぼくれたおっさんが未来の僕なのか、と絶望するでもなく、未来の世界ではタイムスリップが実現するんだ、と驚き興奮するでもなく、僕の心は冷めきっていた。あいにく、そんな話を手放しで信じるほど子供じゃない。たぶんおっさんは口から出任せを言っているんだろうと分かっていた。  川沿いを泣きながら歩いている子供を見て、自殺をするんじゃないかと心配したのかもしれない。そこに33年後の自分が現れたら、とりあえず33年後まで生きていることが確定する。今の悲しみなんて死ぬほどのことじゃないんだと思わせることが可能だ。  おじさんのすごいこと言ってやったという雰囲気とは対照的に、僕の反応は冷ややかだった。 「じゃあ未来の世界はどうなってるの?」  おっさんが適当なことを言っていると理解して、ちょっと意地悪な質問をした。本当に未来の世界から来ているなら詳細に答えられるはずだ。 「ん? すげえぞ、そりゃもうすごい。とにかく未来だ」  おっさんは苦しそうに答えた。やはり具体的ビジョンはない。 「車は空を飛んでる?」 「飛んでる、飛んでる。空が大渋滞よ」  もはや適当である。 「じゃあさ、僕は結婚してる?」  ちょっとこのおっさんの戯言に付き合ってみようと思った。少し意地悪な気持ちもあったかもしれない。それで、確信めいた質問をしてみた。 「さあどうだろうなあ。それは言わない方がいいんじゃねえかなあ」  この辺は僕の将来に関わることなので適当には言わないらしい。なかなか良心的な部分もあるらしい。結婚してると言ったら安心して気を抜くかもしれないし、してないと言ったら絶望するかもしれないからだ。なかなか配慮がある。 「じゃあさ、未来の僕は自転車持ってる?」 「おお、持ってる持ってる、5台持ってるわ」  やはり人生に関わること以外の未来の話は適当に答えてくる。もはや適当すぎて清々してくるくらいだ。何をどうやったら自転車を5台持つ展開になるのか。
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おっさんの予言はほとんどデタラメだった。けれど……
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