ニュース

「亡き母」と「大麻」への愛を法廷で語った被告<薬物裁判556日傍聴記>

 とは言え、繰り返しになりますが「営利目的所持」が疑われるほどの量です。被告がそのように大量に消費するようになったのは、ここ10年のことだと言います。そうなった理由が何かあるのでしょうか。その理由として正当性があるか否かはともかく、ここからは被告の複雑な家庭の事情が語られます。 弁護人「その10年くらいで大麻をやっちゃってた、特にやっちゃってたというのは、何か原因というのは考えられますか?」 被告人「普段から、あの、その、リラックスしたり、音楽聞いたりしながら吸っていたんですけど、今回その大阪府立神経医療研究センターで、1時間くらい診察を受けたんですけども、もしかしたら母の死が原因なんじゃないかと言われちゃって、もしかしたらそうなのかなあなんて思ったりするところもありました」 弁護人「今おっしゃられた大阪府立神経医療研究センターというのは、今回の逮捕をきっかけに、あなたが保釈後通っている病院ですよね?」 被告人「はい。そうです。はい」 弁護人「お母様が平成16年に亡くなられたということですよね?」 被告人「はい」 弁護人「これ、お亡くなりになった原因は何でしたか?」 被告人「もう、その僕が小さい頃から、母は、薬を1日30錠以上飲むんですよ。朝昼晩と。あの、その薬の副作用というか、肝不全で、はい。亡くなりました」 弁護人「薬という話が出ましたが、何の薬だったんですか?」 被告人「薬はハッキリとは全てはわからないんですが、まあ、精神的な薬であったり、痛み止めとかもあったと思うんですけれど、そういうのですね。はい」 弁護人「お母さんは精神病とおっしゃっていましたけど、何か精神の病にかかられたというのは、いつ頃なんですか?」 被告人「事故の前後だと思います。はい。事故じゃない、あっ、事故か。事故があったんですけど。」 弁護人「事故の前後って交通事故っていうことですか?」 被告人「そうです。はい」 弁護人「ちょっと質問変えて、あなたのお父さんはどうなっているんですか? 今は?」 被告人「私の父は、まず、あの、私が2歳か3歳の時に、父と母は、あの別居して、父とは、その後、そうですね、ほとんど会っていません」 弁護人「別居と言ったけれども、お父さんお母さんは離婚されたんだよね? お母さんは、それを原因に病気を患ったんではないんですか?」 被告人「……」 弁護人「まだ、あなた小さかったから全然わからなかったかもしれないけど」 被告人「…だと思います」 弁護人「で、お母さん、あの交通事故って話もあったんだけれども、交通事故っていうのは、どういうことだったんですか?」 被告人「……えーと、(涙声)離婚が原因で、だと思うんですけど、それで、あの、自ら、その、車に……(グスッ)、そうですね、飛び込んでしまって、その事故が、交通事故です」 弁護人「その交通事故が原因で、お母さんは車イスの生活になっちゃったんですもんね」 被告人「そうですね。小さい頃から、はい。母は車イスでした」 弁護人「うん。まあそんなこともあって、おばあちゃんと、3人で一緒に暮らすということになったんですよね?」 被告人「……(涙で声が出ず、ただただ頷く)」 弁護人「それで、お母さんが亡くなられた時、あなたは、どういう状況に陥りましたか?」 被告人「そうですね。その際は、10年前は、亡くなった時は、2、3日ずっと涙が止まりませんでした」 弁護人「お母さんに、親孝行してあげようとか、そういうことは思っていたんですか?」 被告人「はい。そうですね、当時、祖母と、その事故で母が入院して、それで退院してきてから、祖母と母と私と3人で暮らすようになったんですけど、順番的には祖母が亡くなるんだろうなと思って、父もいないことですし、しっかりしなきゃ、あの、自分の家のことも、自分の仕事も、人間的にもしっかりしなきゃな。ということで、そうですね。祖母がいる間にと思って、全力でやっていたんですけれど、どうやら母も、体力がもたず……」 弁護人「あなた音楽頑張っていたという事だけれども、あの音楽ではそこそこ、メジャーと言っていいかわからないけど、っていうところまでいっているんですよね?」 被告人「はい。それで食べていた時期も随分ありました」 弁護人「ところがお母さんいなくなっちゃって、ある意味、ちょっと糸が切れちゃったような精神状態になったと、お聞きしていいですか?」 被告人「そうですね。ここ10年間くらい、あの、振り返ると、地に足がついていなかったんじゃないかなと思うところもあります」 (中略) 弁護人「今回の件を機に本気で大麻を断絶しようという風に考えていますか?」 被告人「はい。もちろんです」 弁護人「その決意を持って、大阪府立神経医療研究センターとか、南斗総合精神保健福祉センターとか、宮坂医院に通院することになったということでいいですか?」 被告人「そうです」 弁護人「それぞれの病院では、どういう治療を受けているのか簡単に教えていただけますか?」 被告人「大阪府立神経医療研究センターでは、まず、すごく遠い場所だったんですけれど、府立ということで、信頼を持って、そこでは診察を受けました。1時間半くらい診察を受けました。そこで、遠いでしょうということもあり、先生は薬物依存に対しては、集団カウンセリング、集団セッション、その勉強会みたいなのが、私が住んでいる中央区にあるので、受けてみてはどうかと、そういうことと、その、家の近くに、昔母が通っていたことがある宮坂医院というところに精神科があるので、そこで診療を受けてみたらどうだということで、集団セッションと宮坂医院の方で治療と通院をさせてもらって、少ないんですけれど、処方箋も出していただいています」
次のページ right-delta
弁護人は伏線を回収するかのように…
1
2
3
4
5
※斉藤さんのnoteでは裁判傍聴記の全文を公開中。https://note.mu/so1saito/n/n1100381eec9c
おすすめ記事
ハッシュタグ