「亡き母」と「大麻」への愛を法廷で語った被告<薬物裁判556日傍聴記>
弁護人「あなたの大麻の使用歴について、ちょっと聞きますが、初めて大麻を使用したのは19歳の頃ということでいいですか?」
被告人「はい。そうです」
弁護人「で、それから、これまで、ずっと使用していたということなんですか?」
被告人「いえ。あの、その、実家が上野に引っ越したりして、23歳から26歳まで実家に住んでいたりした時があったんですけれど、そういう時は、ほとんど吸いませんでした。あと断続的にというわけではなく、はい。そうですね。はい。そういう吸わない時期もありました。はい」
弁護人「私の認識だと、19歳の頃からずっと使っていたとなると、毎日毎日大麻を使っていたように聞こえるんですけれども、そういうことなんでしょうか?」
被告人「いえ。聞かれたことに対して、平均的なもので質問には答えています」
弁護人「質問には、というのは、警察とか刑事さんとか、そういうことですね?」
被告人「はい。そうです。はい」
弁護人「あなたの供述調書を見ると、週に3回から4回くらい吸うと書いてあるんだけど、そうではないってことですか?」
被告人「持っている時はそれくらい吸ったりするということですね。はい」
弁護人「大麻は持っていないこともあるんですか?」
被告人「もちろんです。はい」
弁護人「まあ、その時にもよるかもしれないけど、1年の期間のうち、どのくらいの期間、あなたはどれくらい大麻を持っているんですか?」
被告人「まあ、半年も持ってないです」
弁護人「半年も持っていない時は、なぜ持っていないんですか?」
被告人「年がら年中おいしい大麻があるわけではないですので、そういうことからだと思います」
弁護人「お金的にも限度があるということですかね?」
被告人「そうです、そうです。はい。そうです。そのとおりです」
弁護人「今美味しいものとは、いいものってことなんでしょうけど、そういういい物はなかなか買えないものなんですか?」
被告人「はい。もちろんです」
弁護人「逆に簡単に手に入るというか、簡単に手に入るかもわからないんだけれども、簡単により手に入りやすい、美味しくないけれども。そういった物じゃダメなんですか?」
被告人「はい。何でもいいというわけではありません」
弁護人「っていうことはね、せっかくいい物が買えたという感覚なんですよね?」
被告人「はい。そうです。この件では。はい」
弁護人「そうすると、その大麻というのは、他の人に手放したくないという気持ちは強いですか?」
被告人「もちろんです。あの…はい、あの、はい。そうですね。お金を出して買っているものなので、それで、好きで、また買っている物なので、はい、大事に、大事に吸いたいという気持ちがあります。はい」
弁護人「また、なかなか買えないとなると、なくなっちゃうと、また吸えないわけですよね?」
被告人「はい。そうです。」
弁護人「そうすると残りどれくらいあるんだろうとかね、そういう不安というのもあるんですか?」
被告人「もちろんあります。はい。そのため、はい、そうですね。多く買ってしまうことになったり、そのお金に対してすごくあの、細かく几帳面になってしまったりとか、そういうことがあったと思います」
弁護人「でまあ、そうやって買った物を大切に保管したいとか、残りがどれ位あるかキチッと把握しておきたいとか、そういったことから、あなたは真空パックして、小分けにして、持っていたということなんですね?」
被告人「はい」
弁護人「これ、真空パックにしておかないとダメになっちゃうもんなんですか? あなたの経験上ちょっと教えてもらえますか?」
被告人「あの、私は過去にあのその、長い間、大麻との、あのその、付かず離れずの関係の、あっ、あのなかで…買ったけど、せっかく美味しくて買ったけど、お金を出して買ったけど、次の日保存をしなかったせいで、保存をしっかりしなかったということで、やはり、次の日には腐らせてしまったりですとか、次の日にカビだらけになってしまったりという、もう、買った次の日に処分するということも、そういうこともたまにありました」
弁護人「何万円も出して買ったものが、次の日ダメになっちゃったってことがあるってことですね?」
被告人「そうですね。そういうことがあった時は、はい、さすがに、はい、吸えませんでした」
大量に購入したのは、大麻の品質が良く、そうしたものはいつでも入手できるわけではないから。また営利目的、すなわち人に売るために「小分け」していたのではなく、それは品質保持のための行為だったと被告は言います。
自然食品の営業マン。妻と子と暮らす、ごく普通の36歳。温泉めぐりの趣味が高じて、アイスランドに行くほど凝り性の一面を持つ。ある日、寝耳に水のガサ入れを受けてから一念発起し、営業を言い訳に全国津々浦々の裁判所に薬物事案の裁判に計556日通いつめ、法廷劇の模様全文を書き残す
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※斉藤さんのnoteでは裁判傍聴記の全文を公開中。https://note.mu/so1saito/n/n1100381eec9c
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