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低予算でも、アイデア次第で面白い映画ができるんじゃないか/鴻上尚史

― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

声と音の想像力で惹きつけるある映画に唸る


 いやもう、この手があったのか、まいったなあと唸ったのは、映画『THE GUILTY/ギルティ』です。



 見たのは、少し前なのですが、評判が評判を呼んで、続々と公開が広がっています。

 デンマーク映画で、第91回の米アカデミー賞の外国語映画賞のデンマーク代表になっています。

 舞台は、とってもシンプルです。なんと警察の「緊急通報指令室」だけ。本当に、これだけ。

 で、そこに、警察官なんだけど、事情があってオペレーターをしている男性アスガーが電話を受けます。

 繰り返しますが、これだけ。本当にこれだけ。なのに、88分間、まったく退屈しないどころか、ずっとドキドキしながら画面を見つめ続けるのです!

 ネタバレしたくないので、公式サイトが紹介している部分しか書きませんが、アスガーさんが、毎日、じつに日常的な電話を受けて、やれやれと対処している「そんなある日、一本の通報を受ける。それは今まさに誘拐されているという女性自身からの通報だった。彼に与えられた事件解決の手段は“電話”だけ。車の発車音、女性の怯える声、犯人の息遣い……。微かに聞こえる音だけを手がかりに、“見えない”事件を解決することはできるのか―」というのが公式サイトの文章ね。

 どうして誘拐されていると分かったのか、という始まりからしてちゃんとひねっています。

 電話口の女性は、何を言ってるか分からないので、ドラッグ中毒かなと思っていると、アスガーは、「なんかおかしいぞ」と予感します。

 そして、質問に対してイエス・ノーだけで答えて欲しいととっさに言うのです。

 もし、電話した女性の傍に悪人でもいたら、正直に話せませんからね。

 で、細かい質問を積み重ねていくうちに、その女性が、今まさに誘拐されているということが分かっていくのです。

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低予算でも、アイデア次第

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この世界はあなたが思うよりはるかに広い

本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録





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