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ピエール瀧逮捕から考える、不祥事による過去作品の封印は誰のためか/鴻上尚史

― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

ピエール瀧

逮捕数日前のピエール瀧Instagramより

不祥事による過去作品の封印は誰のためか


 ピエール瀧容疑者に関して、これから放映予定の作品だけではなく、過去作品が葬られていきそうだったので、じつに当たり前の感想として、「出演者の不祥事によって、過去作品が封印されるなんて風習は誰の得にもならないし、法律的にもなんの問題もないし、ただの思考停止でしかない。ここで制作者は踏ん張って、作品と1人の俳優はイコールではないと持ちこたえないと、この国の文化は悲惨なことになってしまう」と、ツイートしました。

 結果として、5日間でインプレッションという閲覧数が360万回。「リツイート」が約3万、「いいね」が6万になりました。

 僕自身のツイッター歴では、最大の数字です。マスコミからネットから、インタビューやら取材やら引用やらの依頼が殺到しました。

 僕自身、まったく、予想できないことでした。反論も当然来ました。

 マスコミでは、僕のツイートを紹介して、賛成と同時に反対の意見も紹介していました。

「薬物に汚染された芸能界では、これぐらいのことをしなくてはダメ」とか、「こんなことをしない人を集めて作品を作ればいいだけのこと」とか、「鴻上尚史は麻薬に賛成なのか」なんて反論でした。

 360万の閲覧で、直接僕に返信してきたのは、275人。(こういうことが詳しく分かるのがすごい所です)

 でね、そのうち「何を言ってるんだ! お前は犯罪者を擁護するのか!」と怒ったり、批判したりしたのは、約100人でした。

 直接返信ではなくて、僕の名前を上げて、反論、中傷、批判、難癖などの発言は、ツイッターをエゴサーチした結果、約100人ほど。全体で(多くて)200人ほどでした。

 でね、名著『ネット炎上の研究』(田中辰雄・山口真一/勁草書房)によれば、「過去1年に書き込んだことのある『現役』の炎上参加者は、インターネットユーザーの0.5%しかいない」という統計的調査があるわけです。

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機械的封印は思考停止

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この世界はあなたが思うよりはるかに広い

本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録





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