更新日:2023年04月18日 10:52
エンタメ

<純烈物語>ド平日の昼間、NHKホールの高揚<第6回>

「本当に面白いことをやる時は、告知しないようにするんです」

 2030年の復活を“前倒し”とし、8年ぶりにマッスルが一夜限りの復活を遂げる。当時は後楽園ホールがMAXだったが、今回は両国国技館という大舞台。  マッスル坂井も金型工場の専務との兼業でプロレスに復帰し、今では「スーパー・ササダンゴ・マシン」というマスクマンとして煽りパワーポイントなるプレゼンスタイルを確立させ、バラエティー番組に引っ張りだことなっている。8年間の中でそれぞれがグレードアップし、それを注ぎ込んだマッスルはマニア層だけでなく純烈が出演するからと足を運んだマダム層にも響く、極上のエンターテインメントとなった。  純烈にとっては初のNHKホールにおける単独公演であり、またワンマンでは結成以来最大規模のショーは『純烈のNHKホールだよ(秘)大作戦』と銘打たれていた。ポスターのチラシに躍るフォントを見れば、それが昭和のお化け番組『8時だョ!全員集合』をモチーフとしているのは明らかだった。

NHKホール公演のポスター

 ただ、その内容に関しては当日まで明かされず。マッスルのテイストでやるということを断片的にツィートするだけで、詳細を伏せた。「本当に面白いことをやる時は、告知しないようにするんです。それでも来てくれる人の嗅覚がすごいというようにしたいんで」と、酒井は言う。  マッスルを追い続けてきたプロレスファンは、その切り口で描かれる坂井の“作品”に関しては試合であってもトークイベントであっても追いかける熱量を持っている。だからあとになって、純烈という枠の中でそれが密かにおこなわれたことを知ったら「やられた!」と思ったはず。  何よりも純子と烈男の皆さんに、マッスルの味付けによる純烈を堪能してほしかった。北沢タウンホールで数百人のオーディエンスの前でやっていたスタイルがNHKホール規模のアウェイで受け入れられれば、それはプロレスの興行としておこなわれた両国国技館とはまた違った意義がある。  1部を芝居とし2部構成にしたのも、コントのあとに歌のコーナーがあった“全員集合感”が否応なく漂う。坂井が酒井からこの公演の話を聞いたのは、4月下旬だった。ただ、この時点では今林とともにゲスト出演してほしいというオファーだった。そこからいろいろ話すうち、5月頭の時点で「台本も書いてくれないか?」に変わった。 「俺たちが紅白に出られたらマッスルにハクがつくから頑張るよ」と過密スケジュールの中、その日だけは空けてメンバー全員で出演した純烈に対しお返しができる――8年前はギリギリまで台本が書けず苦しんだ坂井が、1か月で完ぺきに仕上げた。 「今回は演出が小池竹見さんという双数姉妹を主宰していた方で、純烈はもちろん、ゴスペラーズとかケツメイシのショーも演出している早稲田大学の先輩なんです。だから安心して相談できたし、僕の台本を純烈のNHKホールにふさわしい形で演出してくれました。  1月に純烈が出演した前川清さんのショー(明治座)を見にいった時にその構成、空気感を持ち帰って2月のマッスルにも生かせた。それがあったからNHKホールでもこういうことができるという確信がありましたね」(坂井)  小池が今林と小劇団で苦楽をともにした時代から坂井は付き合いがありその後、純烈の演出担当となりステータスを上げていることも知っていた。さらには、マッスルに不可欠な映像製作やライブにおけるV出し、音響にいたるまで当時のスタッフで固めた。目の前に広がる客席はアウェイであっても、舞台上と楽屋裏に関してはホームリングの風景の中でやれた。
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ド平日の昼間、NHKホールの高揚
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(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

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