エンタメ

<純烈物語>ド平日の昼間、NHKホールの高揚<第6回>

ド平日の昼間、NHKホールの高揚

 昼間のド平日。正午すぎにNHKホールへ着くと、会場前は少女のような高揚を包み隠すことなく語り合うおびただしい数のマダムによって埋め尽くされていた。そこを通り過ぎて関係者入り口へと回り中に入ると、今度は山のような報道陣が一角に集まり待機している。どうやら最終リハのあとに、囲み取材の時間が設けられているようだ。  下手の袖からステージを覗くと、バービーボーイズの『目を閉じておいでよ』のリハーサル中。舞台上をさえぎるかのようにそびえ立っていたのは、マッスル両国で純烈の新メンバーとなりながら、女子プロレスラー・藤本つかさとの不倫疑惑を東京スポーツ紙にすっぱ抜かれ、その日のうちにクビとなったアンドレザ・ジャイアントパンダだった。 「いや~、ついにNHKホールまで来ちゃいましたよ。この勢いでいって、僕らも純烈さんと年末の紅白に出られたらいいなあ。今回も呼んでもらい、本当にありがたいです」  こちらに気づくや、場違いの中でようやく知り合いを見つけた安堵感そのままに声を震わせながら、マネジャーである新根室プロレスのサムソン宮本が声をかけてきた。もちろん、その隣には3メートルの巨体で首を縦に振るアンドレザの姿があった。  プロレス界で突然変異的に人気爆発となったアンドレザ。根室という日本の北端で地元の皆さんを喜ばせるためにやっていたことがどんどん巨大化していく戸惑いの中で、こうした舞台に立てる喜びも笹の葉へかぶりつくかのごとく噛み締めていた。  しばらくしてリハが終わると、メディアが待ち構えるブースに4人……ではなく6人がやってきた。純烈のメンバーだけでなくササダンゴと今林も何食わぬ顔をして、ワイドショーでよく見る会見の光景に溶け込んでいた。 「純烈結成前から応援してきてくれた人たちとやりたかったんです」と、酒井は明快なまでにこの公演の意図をまず口にした。しかしそこを掘り下げる質問は飛ばず、光の速さで流された。ああ、これがマッスルとは違うフィールドということなのかと思った――。 (つづく) 撮影/ヤナガワゴーッ!
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ