その後、御幸通商店街に行ってみた。生野コリアタウンの中心となる通りだが、現在は昔ながらの面影を残しつつ少しずつ新大久保化しているという。昔ながらの商店もあるが、いまメインとなっているのは韓国コスメやアイドルグッズ、そして食べ歩きできるチーズドッグやタピオカ屋台だ。 　日韓関係の現状とはお構いなしとばかりに若い日本人女性で賑わっている御幸通商店街だが、途中で気になる光景を見た。女の子達が一斉に望遠カメラで写真を撮っているのだ。何があるのだろうと見てみると若い韓国人男性の4人組がいた。彼らが配っていたチラシをもらってみると、どうやら韓国人の地下アイドルのよう。 　その後、4人組のあとを『ハーメルンの笛吹き』のようにゾロゾロと追いかけていく日本人女子達……。この不思議な光景を、報道を見て騒いでいる人たちが見たら何を思うのだろうか。 　最後は鶴橋商店街にある韓国カラオケへ。カラオケといっても韓国人のおねーちゃんがカウンターで接客するカラオケ喫茶のようなものだ。昼間だが、日本人のオッチャン客が5人ほどカラオケを歌いながら酒を飲んでいる。隣に座っていたオッチャンに最近の報道と生野コリアタウンの関係を尋ねてみると「政府やマスコミが騒いでいるだけで我々一般人には何の関係もないですよ」と何ともあっけらかんな答えが返ってきた。 　報道で生野コリアタウンの景気が少し気になっていた作者だが、どうやら「いらん心配」だったのかもしれない。＜取材・文／カワノアユミ＞東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在はタイと日本を往復し、夜の街やタイに住む人を取材する海外短期滞在ライターとしても活動中。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』（イーストプレス）が発売中。X（旧Twitter）：＠ayumikawano