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おっさんは何故突然キレるのか。人に歴史あり、怒りに歴史あり――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第65話>

 昭和は過ぎ、平成も終わり、時代はもう令和。かつて権勢を誇った“おっさん”は、もういない。かといって、エアポートで自撮りを投稿したり、ちょっと気持ちを込めて長いLINEを送ったり、港区ではしゃぐことも許されない。おっさんであること自体が、逃れられない咎なのか。おっさんは一体、何回死ぬべきなのか??伝説のテキストサイト管理人patoが、その狂気の筆致と異端の文才で綴る連載、スタート! patoの「おっさんは二度死ぬ」【第65話】おっさんの怒りは突然に  おっさんって突如として怒りだすよな。  まるで悪魔でも憑依したかと思うほどに瞬時に激昂し、いきなりトップギアで怒鳴り続ける。あの瞬発力はかなりのものだ。色々と研究を重ねたら発電とかに利用できるんじゃないだろうか。  以前、電車に乗っていた時に車両トラブルか機器トラブルか何かで急ブレーキがかかり、駅でもなんでもないところで停車したことがあった。  「しばらく停車します」  みたいな車内放送が流れたのだけど、それまで吊り革に捕まって隣の貴婦人と朗らかな感じで会話していたおっさんが豹変した。それまで「それでね、オフィシャルヒゲオトコってのを貴子が聴いていたんだけど……」と微妙に何かを間違えている内容を、静かな口調で話していたのに、おっさんが急に豹変した。  「ふっざけんなオラ停まってんじゃねえオラふへふりえvひh(聞き取れず)オラ!」  みたいに、電車の天井あたりに向かって大声でキレ始めた。その前の落ち着いたトーンから考えたら完全にリミットブレイクしていた。隣の貴婦人はそれでも朗らかに笑っていた。周りの乗客はその豹変ぶりにビビっていたし、僕はウンコしたいのにとんでもないところで停車されて絶望の淵にいた。  「それでね、そのオフィシャルヒゲオトコってのを貴子に教えてもらったんだけど……」  ひととおりブチ切れたのちにまた最初のトーンに戻っているのも怖かったし、貴子が全然教えきれていないのも怖かった。あと、ウンコもやばかった。  この突如として豹変するおっさんの怒り、いったいなんだろうかとずっと疑問だったが、それを解き明かすヒントになるかもしれない重要な事件があった。身悶える電車内で僕はその事件のことを思い出していた。
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若者のとある仕草に突如ブチ切れた真田さん
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pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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