更新日:2019年10月22日 17:18
エンタメ

おっさんは何故突然キレるのか。人に歴史あり、怒りに歴史あり――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第65話>

激昂の裏に隠された真田さんの過去

 その前の瞬間まで、「今日も大物釣り上げたよ。こっちを本業にしようかな」みたいなことを朗らかに話していたのに、突如として激昂した。確かに人を指差すのはマナー的に良くないが、この場合は勝手が違う。あくまでも指差した目的地にオッパブ谷口さんがいただけだ。それなのに真田さんは激昂した。  あまりの豹変ぶりにビックリしたタカス君はそのまま泣いてしまった。真田さんのあまりの豹変ぶり、タカス君の号泣、放置された粗大ごみ、何が起こったのか理解していないオッパブ谷口さん、かなりの混乱が訪れ、清掃活動メンバーたちは騒然としてしまった。  真田さんの激昂の理由はなんなのか。本人に話を聞いてみると、過去の経験が影響しているようだった。  真田さんは僕と同じくらいの年代だ。若い頃に、携帯電話の出会い系サイトに夢中だったという。サクラだとか詐欺だとか架空請求だとか横行していたあの時代だ。きっと良い経験なんてそんなになかっただろうと思う。  ある時、メールで約束した女に会いに行ったそうだ。  ちょっと良い服を着て会いに行ったそうだ。そこでは何が巻き起こったのかよく分からないが、待ち合わせには若い連中がたむろしており、ノコノコとやってきた真田さんを笑いものにした。指をさして笑いものにした。ただただ真田さんは傷ついた。  「それからだな、人を指差すって行為がトラウマなんだろうな。わるかったよ。急に怒鳴って。タカちゃんにごめんって言っておいてよ」  おっさんは突然キレる。けれどもそれは理由なき怒りではない。確かにおっさんになるとイライラしやすい傾向にあるが、その怒りにはきっと理由がある。それは主に過去の出来事が関係しているのだろう。  おっさんは若い人に比べてちょっとだけ多くの多くの悲しい経験や、理不尽を受けた経験、許せないことなどが多い。だから導火線となる事象が多いのだ。  急にそれを思い出してブチ切れるが、それが分からない人には突如怒ってるようにしか見えない。言い換えるとトリガーが多いわけだ。人に歴史あり。そしてその怒りにも歴史ありということだろうか。  「なんかさ、真田さんはちょっとトラウマがあっただけだから、気にしないほうがいいよ。それより、ほら、真田さんは出会い系サイトが好きみたいだからさ、最新のマッチングアプリってやつ教えてあげなよ」  僕は何かの機会の時にタカス君のスマホにマッチングアプリのアイコンがあるのを見逃していなかったので、このドエロめってずっと考えていた。現代の出会い系サイトともいえるマッチングアプリをきっかけに真田さんとタカス君が仲直りできると考えていた。
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ところで、オフィシャルヒゲ男とは
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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