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おっさんは何故突然キレるのか。人に歴史あり、怒りに歴史あり――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第65話>

ところで、オフィシャルヒゲ男とは

 しばらくして、真田さんとタカス君が楽しそうに会話しているのを見た。  「それでですね、いわゆる仕分けをするんですよ。そうです。こうやって次々に女性が表示されますから、好みか好みでないか判定するんです」  タカス君のマッチングアプリ指導だ。  「そんな失礼なことしていいの?」  「いいんです。向こうもしてますから」  けっこう熱の入った指導だ。  「なんだか拒否されるの悲しいな。この粗大ごみみたいじゃん」  「でも好みじゃない人と繋がってもしょうがないでしょ?」  なんとか仲直りできたみたいでよかった。僕は吸殻を拾いながらその光景を見守った。  「どうやって判定すんの?」  「好みなら右にスワイプ。ダメなら左にスワイプです」  「スワイプ?」  「こうやって画像を指先でシュッと」 「人を指差すんじゃねーーーー!!!!!」  ダメだこりゃ。  とにかく、人に歴史あり、怒りに歴史ありだ。確かにいきなりブチ切れて怒鳴り散らすなんてよくないことだけど、そこにはそれなりの理由というか、経緯があるのだ。  そんなことを、やっとのことで動きだした電車の中で思い出した。さきほど怒鳴っていたおっさんにも何かそういった歴史があるのだろう。あれだけ豹変して怒るだけの歴史があったのだろう、そう思った。  「それでね貴子に聞いたのよ、そのオフィシャルヒゲオトコのどこがいいのかって」  相変わらず間違えて話しているその横で貴婦人が豹変し、スッと笑顔が消えていた。  「さっきから聞いてりゃ間違え続けやがって。Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)だろうが!」  貴婦人にもやっぱり歴史があるので、いきなり切れる理由があるのだ。怒りに歴史あり。でもそれはおっさんだけの特権ではないので、やっぱりおっさんは怒りすぎだなあと思う。 ロゴ・イラスト/マミヤ狂四郎(@mamiyak46テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。6月29日、本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)を上梓。ブログ「多目的トイレ」 twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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