更新日:2023年04月27日 10:10
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『失踪日記』の漫画家・吾妻ひでおさんが逝去。路上生活、アルコール依存…無頼派すぎる「まんが道」

『ななこSOS』がアニメ化し商業的にも大成功を収める

『不条理日記』以降、ニッチなシーンで活躍していた吾妻さん。1980年より『ポップコーン』、『月刊ジャストコミック』(ともに光文社)にて連載されたSFギャグ漫画『ななこSOS』が1983年にアニメ化され、商業的に最も大きな成功を収めた。
ななこSOS

『ななこSOS』のアニメ化によってマニア以外にも広く知られることに(写真は『ななこSOS』表紙より)

 『ななこSOS』は、超能力を持つ女子高生・ななこの力を利用し、正義のために戦う「すーぱーがーるカンパニー」のメンバーを中心に、ゲストキャラクターを交えながら繰り広げるドタバタ劇。  SFとギャグ、そして美少女が融合した、吾妻さんの真骨頂とも呼べる作品となった。そんな本作がアニメ化もする大ヒットとなり、漫画家として順風満帆な人生を送っていたのだが、次第に人気に陰りが見え始め……。

壮絶私生活を描いた『失踪日記』で漫画界に返り咲く

『ななこSOS』以降、吾妻さんは長い沈黙期に突入する。この頃から頻繁に飲酒し、1989年、うつ状態で失踪、ホームレス生活を経験する。警察に保護され家族の元へ引き戻されるも、2年後に2度目の失踪。このときはガス会社に勤務しながらの失踪生活を送っており、漫画家であることを隠し“東 英夫”として広報誌に4コマ漫画を描いていたという。  だが、転んでもただでは起きないとはこのことだろう、二度にわたる失踪生活やアルコール依存症などの実体験をユーモラスに記録した漫画『失踪日記』を2005年に発表。この『失踪日記』が第34回日本漫画家協会賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭 マンガ大賞、第37回日本SF大賞 星雲賞 ノンフィクション部門、第10回手塚治虫文化賞 漫画大賞など、数々の漫画賞を受賞し再び脚光を浴びるのであった。  また、続編として2013年に『失踪日記2 アル中病棟』を発表し、こちらも10万部をセールスするヒット作に。そんな『失踪日記』シリーズについて、吾妻さんは自身の分身を登場させたことで救われたと話していたそうだ。  晩年はSNSを中心に美少女イラストを公開しつづけ、食道がんで亡くなる直前までさまざまな世代に影響を与えた唯一無二の漫画家であった。
 吾妻さんの漫画家人生は、途中立ち止まるような状況もあったようだが、自分らしく前進し続けたという印象を受ける。世界に誇る日本のポップカルチャーとなった漫画界で、異彩を放った孤高の漫画家の功績を胸に刻み込みたい。<文/A4studio>
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