更新日:2023年05月15日 13:18
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日本の防衛費「GDPの1%」が中国の軍事的台頭を生んだ/江崎道朗

「防衛費1%枠」で中曽根政権の悲劇を繰り返すな

 ソ連の脅威に対抗するためレーガン政権は日本に対しても防衛費増額を要求したが、「GDP比1%枠の撤廃」を叫んだだけで、防衛費をほとんど増やさなかった。非武装中立を唱える野党と「厭戦」世論に勝てなかったのだ。  日本に落胆したレーガン政権はその一方で、ソ連を相手にアフガンなどで米軍とともに戦った中国を高く評価し、「戦友」中国に惜しみなく軍事援助を行っていく。かくしてアメリカ政府に「親中派」が急増し、現在の中国の軍事的台頭に繋がっていくことになる。  防衛費を増やさせなかったばかりに、中曽根氏はその意に反してアメリカを中国側に追いやり、米中「秘密軍事」同盟の強化に一役買ってしまったわけだ。  12月20日に閣議決定した来年度防衛予算案が過去最高の5兆3133億円になったとマスコミは批判しているが、GDP比にすれば1%に過ぎない。トランプ政権が同盟国に求めているのはGDP比2%だ。防衛予算でアメリカの期待を裏切り続けている安倍政権には、中曽根政権の「悲劇」を真剣に学んでもらいたい。
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。
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