更新日:2023年05月15日 13:18
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日本の防衛費「GDPの1%」が中国の軍事的台頭を生んだ/江崎道朗

防衛費、GDP比1%が生んだ悲劇を繰り返すな

ニュースディープスロート 航空自衛隊

来年度予算案の防衛関係費が、5兆3000億円規模となることがわかった。これは過去最大で、8年連続の増額となる。日本の防衛費は「対GPD比1%」以内に抑えることが強く意識されているが、世界では「対GDP比2%」が目安とされている 出典:航空自衛隊公式サイト

 日米同盟強化に貢献――中曽根康弘元総理逝去を報じるある新聞は見出しをこうつけた。  中曽根政権登場前、日米同盟は深刻な危機に直面していた。  1980年代当時、ソ連はアフガン侵攻に踏み切っただけでなく、大陸間弾道ミサイルSS20をヨーロッパに配備し、北海道「侵略」も狙っていた。  レーガン米大統領は、日米同盟を軍事的に強化することでソ連の脅威に対抗しようとした。だが、時の鈴木善幸首相は1981年5月、日米共同声明で日米の関係を「同盟関係」と初めて明記したことに関し、「(同盟は)軍事的意味合いは持っていない」と発言したのだ。  レーガン政権は、日本が自由主義陣営の一員としてソ連と対決するつもりがないのかと対日不信を募らせた。  この対日不信を解消しようとしたのが、1982年11月に総理に就任した中曽根氏だ。「日米は運命共同体」と発言して反共主義を鮮明にするとともに、レーガン大統領とは「ロン、ヤス」と呼び合うほどの親密な関係を築くことに成功した。

一方で強化された米中「秘密軍事」同盟

 ただ、話はここで終わらない。確かに中曽根氏のおかげで日米同盟は強化されるようになった。だが、それ以上に強化されたのは、米中「秘密軍事」同盟であった。  ニクソン政権からオバマ政権まで対中政策を担当したM・ピルズベリーは’15年、『China 2049』(日経BP社)でこう暴露した。 「秘密裏にではあるが、中国を戦略上の対等なパートナーとして遇したのはレーガンだった。米中が協力した三つの主な作戦は、アフガニスタン、カンボジア、アンゴラにおける反ソ勢力への秘密支援だった」 「レーガン政権は、中国を後押しすればソ連に対抗できると信じ(中略)1985年、アメリカは(中略)武器さえ提供するようになった。レーガン政権が、10億ドル超の六つの主要な武器システムを中国に売る手はずを整えたのだ」
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「防衛費1%枠」で中曽根政権の悲劇を繰り返すな
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(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。

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