更新日:2023年05月23日 17:13
スポーツ

カズ、中村俊輔…J1に帰ってきた横浜FC“ベテランカルテット”に密着

カズの背中を俊輔と松井が。その背を南が仰ぎ、追いかける

「長年がむしゃらにやってきて、だいぶ性格も丸くなったんでね、どんな状況も前向きに捉えていきますよ」  昨年7月にジュビロ磐田から電撃移籍した中村俊輔。昨シーズン黄金の左足を持つ男に与えられたポジションはDFの前の守備的なボランチだった。41歳の選手にとっては「妥当」なコンバートに思えたが、彼はチームから求められたことを地道に、そして確実にこなそうとしていた。
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MF 46 中村俊輔(41歳)

 しかし、J1の舞台に戻った今季は本来のトップ下でプレーするという。カズに劣らず黙々とトレーニングをしている姿が印象的だった中村。桐光学園で高校選手権準優勝、横浜マリノス入団、トルシエジャパン招集、イタリア・レッジーナ移籍、セルティック、エスパニョール、日本復帰……その足跡を常に快く撮影させてくれた男は、こう語ってくれた。 「トップ下としてのプレーを監督から、チームから求められ、認められるようになりたい。前線でたくさんボールをもらって相手の嫌がることやったり、いいパスを供給してチームに貢献したいですね。今年それができたら自分にとってもすごく面白いシーズンになると思いますよ」  節々で彼の姿を写真に収めてきたが、そのたびに「なんでいるの!?」とおどけたリアクションをする中村も「キャンプではカズさんと(宿舎の)温泉に入ってすごくいいリカバリーになっています」とカズと初のチームメイトになることに喜びを隠さない。再びJ1の舞台で戦う英気と楽しみを52歳のカズからもらっているようだ。  一方、そんなやりとりを見ていたのが柏から移籍してきて、今年で13年目、40歳のGK南雄太。 「Jリーグで自分より年上が5人いるんですが、そのうちの2人がウチのチームにいるってすごくないですか!」
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GK 18 南 雄太(40歳)

 ’99年ナイジェリアU-20W杯準優勝。柏時代は下平監督とともにキャリアを磨いたベテランだ。  昨年はサブに甘んじる時期もあったが、柏レイソル時代の盟友、下平コーチ(当時)が監督に昇格したあたりから正GKに復帰すると、18戦無敗を誇るなどそこからチームは急上昇、多国籍のベテランから若手までのチームを最後尾からまとめている。  しかし、練習ではライバルとなる若手GKに声をかけるなど、リーダーシップにも長けている。昨年に引き続き、キャプテンを任され、チームメイトから抜群の信頼がある。そんな40歳のキャプテンも「年上の2人」には舌を巻く。 「カズさんは別格として俊さん(中村俊輔)のプレーを後ろから見てると、自分もまだまだがんばれる気になります。マジでやんなくちゃいけないって……」  そんなピッチ上の元気なベテランの姿を見て、若手はどう思っているのか?  J2の水戸ホーリーホックから移籍し、左サイドバックのレギュラーを狙う、DFの志知孝明(26歳)は子供の頃から見ていた憧れの選手たちに、尊敬の念を惜しまない。カズや俊輔、松井、南らとともに入る露天風呂では「カズさんに最高のクロスを上げます!」と全裸で宣言するほどだ。  そんな若手に静かながらも、優しい視線を向けていたのが、38歳の松井大輔だ。フランスで長くプレーしてきた両利きのドリブラーも横浜FCで3季を経て、苦楽を味わってきた。昨年はボランチにコンバートされ、新境地を開拓してきたが、移籍してきた中村俊輔が同ポジションに挑戦、結果、しのぎを削る形となった。
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MF 22 松井大輔(38歳)

 奇しくも’10年の南アフリカW杯、直前まで「10番」を背負ってレギュラーで試合に出ていた中村はベンチを温め、その座を松井に譲った経験がある。その後松井はジュビロ磐田に移籍、のちに磐田に中村が移籍してきてチームメイトに。そして両者が横浜FCに移ってきたことで、三度目の邂逅。中村はそんな松井を「戦友」と親しみを込めて評す。  このキャンプでは何を聞いても、「ふふふ」と笑うだけだった松井。驚くほど声を発しない。背中で語る姿は若手の手本となっているが、松井の手本はカズだ。
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本来のトップ下でプレーする中村俊輔とリベロの松井大輔。両雄が並ぶときは来るか?

 磐田時代からカズと毎年1月にはグアムで自主トレーニングを積んできた。自身の公式インスタグラムで誰よりも軽やかに「チームKAZU水泳部」として、カズの「肉体美写真」を上げ、世界中から称賛を浴びた実はユーモア溢れる男でもある。

リビングレジェンドが「J1」で躍動する姿を目に焼きつけろ!

 そんな全員の尊敬を集めるカズはキャンプ最終日を前に臀部の痛みが再発。チームを離れ精密検査をすることとなり周囲をざわつかせたが、今月12日に横浜市内で行われた「出陣式」には元気に登場した。
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横浜市庁舎で行われた「出陣式」。林文子横浜市長の前で抱負を述べるカズ。市議たちもレジェンドたちの登場に思わずスマホを向ける

 全選手揃いのスーツで決めるなか、クロムハーツの黒フチ眼鏡をかけるカズはひと際輝いて見えた。  カズの影響力は選手のみならず横浜市政にも及ぶ。昨年12月のJ1昇格報告会では「屋根がね……。雨の日はサポーターが濡れてしまうので協力してもらえれば」とコメントしていた。  ’55年開場で老朽化が進む本拠地・三ツ沢球技場の大規模改修を林文子横浜市長に強く訴えた。今回は林市長自ら挨拶の席で「三ツ沢球技場に屋根をつけましょう!」と宣言した。  しかも同じ街に横浜Fマリノスというライバルチームがあるというのに市長は、議長はじめ横浜市議会サッカー部の面々に「予算は大丈夫ですよね!」と公開で念押しするほどの入れ込みよう。  カズがマイクを握ると、詰めかけた議員たちが一斉にスマホのシャッターを切る様子はまさに「キング」の貫禄だ。 「チームも順調。(23日のJ1)開幕戦に勝って勢いをつけ、ベスト10入りを目指して1年間精いっぱいやりたい」  と高らかに宣言したカズ。  23日の開幕戦の相手は8日の横浜Fマリノスとのスーパーカップを制した、イニエスタを擁するヴィッセル神戸だ。  現在は別メニューで練習を続けているというカズだが、全世界を驚かすべく、開幕スタメンに向けて万全の準備をしている。  リビングレジェンドが日本のトップリーグであるJ1で躍動する姿を、ぜひこの目で確かめようではないか!
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ランニングでは常に先頭を走るカズ。年長者が背中で若手を引っ張っていく

●FW 11 三浦知良(52歳) ’67年2月26日生まれ。プロ35年目。J1開幕直後には53歳の誕生日を迎える。リーグ戦出場となれば「最年長記録」として世界中でニュースとなることは必至。最新刊『カズのまま死にたい』(新潮新書)が発売された ●MF 46 中村俊輔(41歳) ’78年6月24日生まれ。昨季途中J1の磐田からJ2だった横浜FCに移籍。10試合に出場し、J1自動昇格に貢献。黄金の左足は健在、直接FKでのゴールを担う。今季はトップ下でもプレーの予定。背番号は足して10の「46」 ●GK 18 南 雄太(40歳) ’79年9月30日生まれ。チームで3番目の年長者。’99年ワールドユース準優勝メンバー。’09年に柏で契約満了となって以来のJ1の舞台となる。昨季途中から正GKとなり33試合出場。カズと同じ名門・静岡学園高の出身 ●MF 22 松井大輔(38歳) ’81年5月11日生まれ。’04年アテネ五輪、’10年ドイツW杯を経験。フランス、ロシア、ブルガリア、ポーランドと長く海外でプレー。リベロからボランチ、年々プレーの幅は広がっている。両利きのテクニシャンは健在
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下平隆弘監督の采配と気配りと
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