ヤンキーの“卒ラン”、注文数は過去最低でも新型コロナの影響「なし」
卒業式が開かれる3月になったが、今年は少し状況が違う。感染拡大する新型コロナウイルスの影響で、イベントの自粛、延期が余儀なくされている。卒業式も例外ではなく、大学などを中心に式典中止を発表する学校が相次いでいる。
学生たちが晴れ舞台で着る服のコーディネートをサポートする紳士服店には、キャンセルが出て業績悪化が懸念されるとの声も少なくない。学生服のメジャー市場で不安の声が聞かれるなら、同じ学生を対象としながら数少なくなっている「ヤンキー」を支える卒ラン(※卒業式のために豪華な刺繍を施した変形学生服)店はどうだろうか?
「新型コロナの影響!? 卒ラン自体の注文は元々が少ないんだから、そんなのないよ」
神奈川県厚木市で卒ランや特攻服などを手掛ける「ファッションハウスアオキ」の店主・青木利夫さん(67)が、筆者(私)の仮説を一蹴した。同店は全国でも数少ない「ヤンキー」御用達の店だ。仮説がもろくも崩されてうなだれる筆者に対して、青木さんがこう言う。
「注文は大体夏休みぐらいからきて、最盛期は1月くらい。全国各地から注文を受けるんだけど、今年はほとんど来てない。最盛期の3分の1くらいなっている」(青木さん、以下同)
一体なぜ注文が少なくなっているのか。青木さんはなかなかこれといった理由が浮かばないと前置きしつつ「各学校側の締め付けが強くなっているのか、子どもたち自体が興味を持たなくなっているのかもしれない」と推測する。
「卒ランを自分も着てみたいとは思わないけど、若いときに様々なことに挑戦するのはその後の人生にとって大きなプラスだと思うんだけどねぇ」と昨今の若者の変化を嘆いた。
そもそもニッチな市場である以上、注文が殺到するといったことは起きないといい「やんちゃな子たちを束ねるリーダーが増えてくれば、自然と口コミで話題になり注文もくるんじゃないですかねぇ」と楽観視する。
卒ランや特攻服を扱うようになったのは、学生服メーカーの社員の「これからブームが来ます」との口車に乗ったのがきっかけ。いつ頃始めたのか、記憶は定かではない。先代の父から事業を受け継いだ。クリーニング屋や紳士服店を経て、現在の形になったのは40年ほど前。成り行きで始めたことだったが、噂を聞きつけたヤンキーたちが全国から駆け付けた。
卒ランに限らず、当初は学生による注文も多かった。夏と冬の衣替えの時期に合わせ、短ランと長ランを購入するヤンキーたちの対応に追われた。最盛期には、店のレジを1台増やすほどの忙しさ。「万引きも多くて、ひどいときには長ランを着せたマネキンごと盗まれる被害もありました」と笑い交じりに振り返る。
メジャー市場以上に、ニッチな市場では深刻な影響が及んでいるのではないか。そう考え、令和初の卒業式に向け準備する厚木の老舗店舗を訪れて聞いてみた。
注文数は最盛期の3分の1、今年は過去最低
学生服メーカーの口車に乗っかり導入
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新聞記者兼ライター。スター・ウォーズのキャラクターと、冬の必需品「ホッカイロ」をこよなく愛すことから命名。「今」話題になっていることを自分なりに深掘りします。裁判、LGBTや在日コリアンといったマイノリティ、貧困問題などに関心あります。Twitter:@hokkairo_ren
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●ファッションハウスアオキ(http://www.aoki2.com)
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