更新日:2023年05月24日 14:51
仕事

ヤンキーの“卒ラン”、注文数は過去最低でも新型コロナの影響「なし」

両親へ感謝の刺繍「パパ、ママ、育ててくれてありがとう」

 今と昔では、刺繍にも違いが生まれている。長ランに絵柄や刺繍を加えると、10万円近くに上る高額商品。思いを込める相手は愛する女性から育ててくれた両親へと様変わりしている。 「彼女に長ランをプレゼントするので『愛してる』と刺繍して欲しい、との注文を受けることが以前は多かった。熱い若者だなぁ~と思いましたね」  最近では親と同伴で店に来て、卒ラン選びをする子どもたちも少なくないという。「刺繍に両親へ『パパ、ママ。育ててくれてありがとう』など感謝の言葉を添えてほしいという要望が多くなった」と近年の傾向を分析する。 刺繍

2000年代初め、いち早くネット進出。事業継続の鍵に

卒ラン 2000年代初めにはいち早くネット注文も始めた。この事業展開が、現在も生き残る大きな理由になっている。 「海外に向けて販売網を開拓しようと思いましたが、うまくいきませんでした。むしろ全国から注文が来るようになった。新型コロナでも売り上げがあまり変わらないのは、店頭販売よりもネット注文が多くを占めているからです」  注文から完成までスピード重視をウリとしている。どんな難しい刺繍や絵柄でも、3~10日以内に仕立てる。難易度や得意分野に応じ、5人の職人が要望に応える。虎柄模様やアニメキャラクターから仲間達の名前を刻んでほしいといった希望まで、職人たちは懇切丁寧に対応。 「職人たちもだいぶ高齢になってきたので大変なこともあるが、写真を添付して刺繍してほしい絵柄を頼んでくれればクオリティーの高いのができますよ」と自信を持つ。

いつか変形学生服の再ブームを願う

店頭の貼り紙

店頭の貼り紙

 3月現在は新型コロナウイルスの影響で店頭販売は実施せず、ネット注文のみを請け負う。結婚式やコスプレイベントなどで変形学生服を着たいという申し出に合わせ、職人が仕立てた服を納品する作業に追われている。先行きが見通せない状況に加え、今後イベント自粛などが起きたときには影響は避けられないことを懸念し「景気が悪くなると、打撃を受けるのがこういった業界。商売をやっている以上、売り上げが伸び悩めば対策を考えなくてはいけない」と気をもむ。  そんな状況でも「変形学生服の魅力は色あせることない」と強調する青木さん。「浮き上がる絵柄のように立体感のある刺繍は、街中で目立つしかっこいい。影響力のある人が着こなしてくれれば、たちまち人気になりますよ」と明るい未来を描く。自分に問いかけるかのように「ファッションって誰か象徴的な人が出てきて、ブームを作るんです。それがいつ来るかはわからないけど、ニーズが訪れるのを気長に待ちます」と念押しした。<取材・文・撮影/カイロ連>
新聞記者兼ライター。スター・ウォーズのキャラクターと、冬の必需品「ホッカイロ」をこよなく愛すことから命名。「今」話題になっていることを自分なりに深掘りします。裁判、LGBTや在日コリアンといったマイノリティ、貧困問題などに関心あります。Twitter:@hokkairo_ren
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●ファッションハウスアオキ(http://www.aoki2.com
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