変形学ランに刺繍を…ヤンキーの“卒ラン”文化はなくならない!? 厚木の老舗に聞く
3月と言えば、学生たちが卒業式を迎える頃だろう。かつて、この季節になれば、硬派な生き様を変形学生服の“卒ラン”に刻んだクラスのヤンキーたちが威風堂々と街を練り歩いていたものだ。九州や沖縄、西日本の一部では今でも盛んなようだが、こうした姿は東京や神奈川などの都心部ではすっかり見られなくなった気がする。現在、都心部での卒ラン事情はどうなっているのだろうか。
「都心部……東京や神奈川だとね、もう、やっている業者はうちぐらいじゃないですか」
こう話すのは、神奈川県・厚木市で創業60年以上、卒ランや特攻服などを手掛ける業界御用達ショップ『ファッションハウスアオキ』の青木利夫さんだ。昨年大ヒットしたヤンキードラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ)にも変形学生服を衣装提供していたという。
「時代の流れかな。昔は同業者が多かったけど、気づいたら他がいなくなっていた」
ヤンキー漫画やドラマが流行したのは80年代。多くの若者たちが“不良”に憧れを抱き、短ランやボンタンなどを身にまとっていた。しかし、近年はいわゆるヤンキー然としたスタイルは減少傾向にあることは事実である。とはいえ、『ファッションハウスアオキ』には今でも注文が絶えないという。
「ここ数年でそこまで売り上げが変わったわけでもない。今年はちょっと少なかったかな、ぐらい。ただ、商品の動きは早くて、夏ぐらいから卒ランの注文があった。やっぱり、好きな人はしっかり準備するんじゃないですか」
卒ランを注文するのは、どのような人たちなのだろうか。また、予算感はどのぐらいか。
「川崎とか横浜が多いかな。ただ、今はネット注文がメインだから。沖縄まで全国ですね。仲間内にリーダーシップをとる子がいるとね、みんなでそろえようってなるんじゃないですか。なかには、親御さんといっしょに来る人もいる。刺繍だから高いんですよ。平均的には5万~10万円が多いですが、20万円ぐらいするものだってある。恐らく、自分でアルバイトをしてお金を貯めたり、親御さんから借りたりしている場合もあるでしょう。むしろ親が自分の子どもに着せたがるんですよ。彼らは丈とか刺繍にもこだわりが強くて。一方で、子どもたちはなにも言わない。そこまで気にしていないんじゃないですか(笑)」
伝統は終わらない。卒ランは、若いときに暴走族をやっていた世代が親となり、子に受け継ごうとする側面もあるようだ。
ヤンキー世代の親が子に受け継ぐことも…
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi
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●ファッションハウスアオキ(TEL046-221-8798、http://www.aoki2.com)
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