更新日:2020年06月20日 15:15
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イージス・アショア配備中止で突き付けられた「敵基地攻撃能力」を保有すべきか?という議論

「敵基地攻撃能力」と政治的な問題

 このような「撃ち込まれる前に、敵のミサイル基地を攻撃する」という考え方は、世界的にはメジャーな選択肢ですが、日本では大反対にあいます。「自衛隊を合憲にするために憲法改正を断行する」と言った安倍政権ですら、その発議さえできないのが現状です。  今国会も閉会しましたが、自民党は憲法改正を党是として1955年(昭和30年)に結党されたにもかかわらず、65年経った今もなお、憲法の一文字すら変更できていないのです。  かつて北朝鮮は核兵器をもたず、中国も今ほど露骨に日本の領土領海を侵犯してはいませんでした。その時代につくられた憲法が「使えない」なら、バージョンアップして変えなきゃって思いませんか? 自衛隊は専守防衛を信条に設計されてきた組織ですから、国内での対地攻撃能力はありますが、敵基地攻撃能力をほとんど持っていません(正確には、持ってはいけないとされてきたのです)。  あんなに立派な大艦隊を持つ海上自衛隊は、巡航ミサイルすら配備していません。護衛艦の艦砲射撃では射程が短すぎて敵地攻撃には向きません。これが、専守防衛という概念の空虚な実体です。  自衛隊は憲法により敵地を叩くことを許されていません。長距離爆撃機や中長距離を飛ぶ弾道ミサイル、艦艇から敵領土を狙う巡航ミサイルなどは「できる限り配備させない」という呪縛をかけられた組織なのです。しかし、実際には必要に応じて配備や能力を獲得することは可能です。段階を経て必要な能力を増やし、人材を訓練していくことはできるのです。  いずれにしても、まずは弾道ミサイル発射の兆候を把握できるインテリジェンス能力の向上から始めなくてはなりません。これが我が国のお寒い現実です。  問題は政治的な風土です。国家の意思は憲法と予算にあります。いい加減決断してほしいな~と切に祈ります。
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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