都知事選は「大喜利」感覚で見るとおもしろい。お題は「ポピュリズム」!?
文/椎名基樹
橋下徹が政治家として頭角を現しはじめた頃、彼を指して「ポピュリズム」という言葉を耳にするようになった。「大衆迎合主義」と訳され、否定的な意味で使われていた。私は思った。民主主義は多数決である限り多かれ少なかれ「大衆迎合主義」ではないのか? そもそも民主主義が誕生した時、哲学者のプラトンが「衆愚の政治」と批判したはずだ。紀元前から言われている「当たり前のこと」がなぜ今更、取り沙汰されるのだろう? ポピュリズムってなんだ?
調べてみるとある定義にぶつかった。「ポピュリズムとは伝統的な右派や左派に分類できるものではなく、むしろ下に属する運動である。既成政党は右も左もひっくるめて上の存在であり、上のエリートたちを下から批判するのがポピュリズムである」。「なるほど」と私は膝を打った。大阪維新の会の「右」とも「左」とも取れない立ち位置をなんとも不思議に感じていたからだ。ポピュリズムとは「何かと対峙する」ことが重要であり本質なのだ。
そして、その政治手法は「カリスマ的な指導者がインターネットなどのメディアを使って直接民衆に訴えかける」ことと「二者択一のイシューを提示し、住民投票や国民投票でその是非を問う」ことである。後者が非常に重要に思える。「で、どっちなんだい!?」という問いかけに最も民衆は熱狂するからだ。白か黒か選ぶ方が投票のモチベーションが上がるのは当然だ。
山本太郎が都知事選の立候補を表明した。左派の野党共闘の呼びかけを断っての強行出馬である。弱者の救済を主張する山本太郎はリベラルに分類される政治家だろう。だが思想的に左派に立脚していると言うより、下から上を批判している政治家に思える。前述のポピュリズムの定義に彼はことごとく当てはまる。そもそも「れいわ新選組」という党名も「体制側?」と思ってしまうような、奇妙な政党名だ。
その山本太郎の都知事選の公約が、東京オリンピック、パラリンピックの中止である。来たねぇ二者択一! なるほど、そーきたか、おもしろい。私は週刊SPA!で長年読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』(通称:バカサイ)を担当させていただいているために、全てが大喜利に見えてしまうようだ。「お題・都知事選を戦う最も有効な二者択一のイシューとは?」。そんな“頭の体操”をついしてしまうのだ。
「ポピュリズム」ってなに?
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1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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