ライフ

酒飲みはスマホを年に3回失くす。その悪癖は他人のスマホにも…

一件落着と思いきや…

「まじで、スンマセンでした!!」  マッチは平謝りした。 「いやぁ、気にしないでください。俺もそういうこと結構ありますんで~」  片手をひらひらと振りながら和やかに笑うウラマツとグラスを打ち合わせ、昨日のデジャヴのように二人は隣り合って酒を飲み、そうこうするうちに常連客たちが押し寄せ、夜は更けて行った。閉店後、洗い物や閉め作業をしていると、一人の男性が小走りで戻ってきた。 「携帯、忘れました!」  彼の名はヨッシー。始発の電車に乗ろうとホームまで行き、スマホが無いことに気が付き戻ってきたという。 「あれ? 今日は目立った忘れ物はない気がしたけど」  そんな日もたまにはある。「どこかに落ちてるのかな?」わたしは彼のスマホに電話をかけてみた。鳴っている気配も、光っている気配も全くない。 「外に落としたかもしれないから、捜してみます。すみません」  ヨッシーは深々と頭を下げて、再び小走りで出て行った。 「ヨッシーも結構酔っぱらってるからなぁ」 「鞄の中にありました、とかなら良いんだけど」  私とマスターは軽く言って笑い合い、店を出た。翌日、開店してまもなくヨッシーがやって来て、言った。 「なんか俺の携帯、捜してみたら場所が自由が丘になってて……」  我々は愕然とした。そして強く思い出すに至った。彼が昨日、ウラマツとは反対側の、マッチの隣に座っていたというっことを。 「なんなんだアイツ!!」 「何連チャンでやらかしてくれてんだよ!」  呆れ返って騒いでいると、わたしのスマホに一通のLINEが届いた。噂のその人、マッチからであった。 「そういえば俺、また知らない携帯持ってる! ユキナからの着信が入ってるっぽいけど誰のだろう??」  ということは、今回は自分のスマホもしっかり持ち帰り、かつ人のスマホも持って行ったということだ。能天気な文面に若干怒りを覚え、ヨッシーの物だからすぐに持ってくるよう返信した。だが、ここで話は終わりではない。一体何時から飲んでいたのか知らないが、店に現れたマッチは既にへべれけだった。 「持ってきたよ~」  覚束ない足取りで歩き、ゆらゆらと揺れながらポケットを探る。探りながらしばらくして、真顔になった。 「やべぇ。さっきのタクシーの中に、スマホ忘れて来た……」  はい?? 「俺のもヨッシーのも両方……」  はい???? 開いた口が塞がらないとはまさにこのことだった。我々はキレた。 「はぁぁぁ????! なんでスマホ届けに来てスマホ忘れてくるんだよ!!!」 「ギャグかよ!?!?」 「領収書! タクシーの領収書は取ってあるんだろうな!!?!」  幸い領収書は財布の中に入っていた。酔ってまともな電話がかけられないマッチの代わりに、マスターがすぐさまタクシーに連絡を取り、善良なドライバーによって二台のスマホは無事に届けられた。  わたしとマスター、そして常連たちは口を揃えてマッチに言った。 「酒、やめたら?」  マッチはその日も、酔い潰れるまで飲み続けた。<イラスト/粒アンコ>(おおたにゆきな)福島県出身。第三回『幽』怪談実話コンテストにて優秀賞入選。実話怪談を中心にライターとして活動。お酒と夜の街を愛するスナック勤務。時々怖い話を語ったりもする。ツイッターアカウントは @yukina_otani
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