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世帯年収300万円以下は家を失う可能性あり。路上生活は他人事ではない

 人々の健康を脅かし、経済活動を停滞させた新型コロナウイルス。結果、人間的な生活を営むために必要な“家”や“食”の確保すら難しいという人が増えているという。去る8月15日、記者は都庁前で行われた「認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい」と「任意団体新宿ご飯プラス」による、住まいを失った人などに対する個別相談会と、食料品の配布会を訪れた。そこで目の当たりにした「家なき中年」の実情とは――。
「家なき中年」衝撃ルポ

配布される食料品は、それぞれビニール袋に小分けされている。食料品は企業からの寄付などでまかなわれている

コロナ禍で参加者が2.5倍増。家なき中年も集う相談会に密着

 当日の東京都の最高気温は38.7℃。強い日差しがコンクリートに照り返し、熱風がビルの隙間を吹き抜けるにもかかわらず、記者が到着した相談会が始まる1時間前には、すでに多くの人が集まり、長蛇の列をつくっていた。 「家なき中年」衝撃ルポ「今日の参加者は164人。4月以降増え続け、前年同月比で参加者は2.5倍に増えています」  そう話すのは、同相談会を主催する大西連氏だ。 「例年、8月は猛暑に耐えかねて路上生活者も公的支援を受けて生活を立て直したり、熱中症で倒れて入院する人が増えるため、食料品の配布に並ぶ人数は少なくなります。だけど今年は例外。相談会を開催するたびに、新しい顔ぶれを見かけるので、新たに住まいを追われている人が増えている印象です」  相談会に訪れるのは、ネットカフェ難民や路上生活を余儀なくされた人たち。当日はみなソーシャルディスタンスを保ちながら、静かに座り込んでいた。

年収200万円でも危険。住む場所は簡単に奪われる

 その中で、記者が出会ったのは堀康夫さん(仮名・55歳)。今年7月から路上で生活するようになったという。 「コロナの影響で勤めていた工場が生産をストップ。もともとネットカフェで暮らしていたのですが、働き口がなくなり、そのお金すら稼げない。今は池袋近辺で路上生活しながら、寝床を転々としています」  配布される食料品の袋の中には、ミニトマトやバナナ、オーツミルクが詰まっている。堀さんも大切に抱え、その場を去っていった。  また、今回の相談会に訪れた太田隆さん(仮名・52歳)は、今年の3月に警備員の仕事を失い、従業員専用の寮暮らしから路上生活者となった身だ。
「家なき中年」衝撃ルポ

日中はJRに乗って過ごしていると話す男性。「今日は生活保護に関する相談をしました。少しでも状況が好転したら、と思います」

「寝るのは公園だけど、昼間はJRの一番安い区間の切符を買ってずっと乗っている。いけないことだとはわかっていても、外の暑さに耐え切れなくて、どうしても電車内で過ごしてしまいます」  そしてコロナは仕事を奪うだけでなく、路上生活そのものをさらに困難なものにしている。参加者の50代の男性はコロナの影響でコンビニのトイレが使えなくなったのが不便だと話した。 「コンビニだけでなく、駅などの施設や公園の水飲み場などもソーシャルディスタンスを理由に、使用禁止になっている場所があります。これからの酷暑で、水場の確保が難しいのは死活問題です」
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“住まい”から先に失っていく
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