2度目の緊急事態宣言で絶望の淵に立つパブ・居酒屋業態の現実
2021年1月8日から2月7日まで、コロナ禍で2度目の緊急事態宣言が出されることになりました。1都3県を対象としており、もちろん筆者が経営する原価BARも直撃です。これまでも緊急事態宣言はもちろん時短要請もすべて指示通りに従ってきましたし、もちろん今回も従います。
ご存じの通り、飲食業界のダメージは深刻です。帝国データバンクによると、2020年における飲食店事業者の倒産は過去最多となりました。業態別では、酒場・ビアホールが最多で、次いで中華・東洋料理店、西洋料理店、日本料理店と続きます。件数は866件(1月6日現在)ですが、個人店などでカウントされていないお店多く、実際はずっと多いと考えられます。
一般社団法人日本フードサービス協会による外食産業市場動向調査結果によると、2020年11月度は新型コロナウイルスが一向に収まらない影響で、パブ・居酒屋業態の売り上げが大幅にダウンしました。ファーストフードはテイクアウトとデリバリーの需要が高まり、前年同月比は100%を超えています。しかし、パブ・ビアホールは売り上げが49.4%にダウン、居酒屋でも58.8%にダウンしました。ちなみに、ディナーレストラン業態も73.4%と落ち込みは大きくなっています。
売り上げ半減は致命的です。我慢できるというレベルではありません。具体的な数字で計算してみましょう。
経産省の調査によると飲食業界の売上高営業利益率は平均で8.6%。中小企業に限れば11.4%となっています。筆者の肌感覚では5%くらいのところが多いと思うのですが、ここでは10%とします。
売り上げが1000万円ある店の場合、原価が350万円、人件費が250万円、家賃が100万円、水道光熱通信などのインフラで50万円、その他販管費などで150万円で利益が100万円となるイメージです。
売り上げが半減すると、原価は下がりますが、基本的に他のコストはほぼ変わりません。そうなると、マイナス225万円の赤字になります。緊急事態宣言で休業することになると、売り上げはゼロになるので、さらにひどいことになります。例え、月に100万円の補償金が得られても焼け石に水と言えるでしょう。
メディアにはコロナ禍でも売り上げを落としていない飲食店が取り上げられています。それはもちろん素晴らしいと思いますが、できないところが努力していないわけではありません。原価BARでもテイクアウトやネット販売をスタートしましたが、売上金額としては微々たるものです。その道でこれまで努力してきた専門企業のほうが強いに決まっています。
にっちもさっちも行かなくなったパブ・居酒屋業態ですが、国や都は休業補償をはじめ、固定費のうちの家賃や人件費に対して手厚い支援給付金や助成金を出してくれました。そのおかげで2020年を乗り切った飲食店もたくさんあります。
飲食店と同じように苦境に立たされていても、支援金が出ていない業界もあります。税金も無限ではないので、とてもありがたいところです。原価BARでも助成金で首が繋がっていると言っても過言ではありません。支援が打ち切られれば、大量の飲食店がクローズする事態になることでしょう。
営業時間の短縮といってもパブ・居酒屋業態で19時で酒類提供が終了するというのはほぼ休業と変わりません。実際、平日は休業するところが多いと思います。その代わり、土日の昼から夕方まで営業し、少しでも売り上げようとするところも多いようです。
2020年飲食店の倒産は過去最多。売り上げ半減の現実
19時で酒類提供終了は休業しているのと同じ
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お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年に原価BARをオープン。2021年3月には、原価BAR三田本店をオープンした。新型コロナウイルス影響を補填すべく、原価BARオンライン「リカーライブラリー」をスタート。YouTubeチャンネルも開設し生き残りに挑んでいる
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