仕事

日本を旅するUber Eats配達員、配達エリア外の「臼杵」へ

南国の雰囲気漂う宮崎市

小林ていじ

臼杵から延岡の途中の道の駅でコーヒーを飲んで休憩

 94日目。九州を南下して延岡に向かう。臼杵から延岡までは約80キロとそう遠いわけではないのだが、ほぼ山間部なので上り坂が非常に多い。夕方に到着したときにはクタクタに疲れ切っていた。延岡駅の目の前に位置するアパホテルにチェックインすると、すぐにベッドに横になった。ここもウーバーの配達エリアではないので1泊だけの宿泊である。  95日目。宮崎市に向けて出発。そこでようやくウーバーの配達エリアになる。延岡から宮崎市までは約87キロと前日よりも少しだけ距離が長くなる。が、海沿いの平坦な道が続いたので前日よりも走りは快適だった。  宮崎市に入ると、道沿いにヤシの木が並ぶようになる。吹き付ける冬の風は依然として冷たかったが、その景観だけは南国そのものだった。青空を背景にしてヤシの葉が風にそよぎ、僕の心も少しざわめいた。宮崎市に来るのははじめてのことだったが、ここには特別な思い入れがあった。

宮崎のどこかにいる「彼女」

 もうずっと昔に終わったことだった。それでも彼女は僕の心の片隅にずっと存在し続けていた。その彼女は今、この宮崎市のどこかにいるはずだった……。  宮崎市には1週間ほど滞在する予定だが、ゲストハウスは残金の都合でとりあえず4泊分だけ予約していた。そのゲストハウスが位置するのは宮崎市の中心部から遠く離れた青島である。そこはウーバーの配達エリアからは外れてしまっているので、自転車は南宮崎駅に隣接した駐輪場に止めて青島まで電車で行くことにした。翌日から配達するときはまた電車でここまで来ればいいのである。  わずか2両編成の列車に乗って青島駅に到着した。降りようとしたところを車掌に呼び止められた。 「定期はありますか?」 「ないです。南宮崎駅からパスモで乗ってきました」 「それは使えないので現金で払ってください」  なんだかよくわからない宮崎の電車のシステムに戸惑いを感じながらここまでの電車賃の280円を払い、電車を降りた。  無人の改札を抜けて駅の外に出る。外灯がポツポツと並んでおり、その青白い光を浴びたヤシの木が夜の中にぼんやりと浮かびあがっていた。
ヤシの木

ヤシの木は宮崎市の観光シンボルだ

【93日目】 <支出> 食費:1643円 観光費:710円 合計:2353円 <収入> 0円 残金:1万7299円 【94日目】 <支出> 食費:1832円 宿泊費1泊分:3299円 合計:5131円 <収入> 0円 残金:1万2168円 【95日目】 <支出> 食費:1610円 電車賃:280円 宿泊費4泊分:7535円 合計:9425円 <収入> 0円 残金:2743円 <取材・文/小林ていじ>
バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
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