エンタメ

ゆきぽよ、悪友と関係が切れなかったのは「優しすぎるから」

とにかく優しいゆきぽよ


 私は去年見たテレビ番組『緊急!公開大捜索’20春』(TBS系)を思い出した。この番組は、突然記憶喪失になってしまい、家族と離れ一人ぼっちになってしまった人の身元を、テレビの力を使って捜索する内容だ。ゆきぽよは、その中の1人の女性に付き添い、彼女の記憶に残る場所をたどるロケをした。記憶をなくしているので当然普段から不安気な様子の女性と、ギャルのルックスのゆきぽよとのギャップが大きく、キャスティングにまず驚く。しかし番組を見ていくにつれ、なぜゆきぽよが起用されたのかわかる気がした。  ゆきぽよが、とにかく優しい。ロケ中、薄着でいかにも寒そうな女性に上着を貸してあげる。スタジオで不安げに、自分の情報を待つ女性の背中をさすり続ける。何より短いロケの間に、ゆきぽよとその女性の距離が縮まっているのが見ていてわかる。裏表のない性格で、相手の懐に飛び込むから、早く人と打ち解けることができるのだろう。  ゆきぽよは、アメリカ版の「バチェラー」に、英語もできないのに出演した。「相手を見れば、なんとなく言ってることはわかるし、言いたいことも伝わってくる」と「アサ芸プラス」のテリー伊藤との対談で言っていた。要するに「心は伝わる」と思っているのだろう。ゆきぽよは「情」を信じている。彼女は、浪花節の中で生きているのではないだろうか。

襟を正して頑張れ! ゆきぽよ

 インターネットによって世論が可視化されるようになって、人の目ばかり気にしなければならない。「不良性」は、昔から最も定番の「スターの要素」であるが、制約だらけの世の中にあって、その存在はより必要とされるのではないだろうか。彼らの魅力は、常識にとらわれないその痛快さだけでなく、機械化する人間に対する反抗心、つまり「情」にある。  そういった意味でも、ゆきぽよは、現在のエンターテイメント業界で、非常に希有な存在であると思う。それに、なによりダサくない。去年、「ゆきぽよとSLOTHとレスリー」名義で発表したDoja Catの「Boss Bitch」を日本語でカバーしたヒップホップの曲最高だった。だから、ゆきぽよは、是非アンミカ先輩の言うことをよく聞いて、襟を正して、夢に向かって真っ直ぐに、進んでいって欲しいと、おじさんは思ったのであった。
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
1
2
おすすめ記事