更新日:2021年03月06日 10:10
エンタメ

<純烈物語>コロナ時代をどう生きたのか? メンバー、スタッフ、ファンの思いが一冊に<番外編>

ライブにおける“試合後のコメント”を残す

 それを可能としているのが、ライブにおける“試合後のコメント”です。通常、音楽のコンサートや演劇はステージを終えたあとに報道陣がバックステージに集まり、アーティストの話を聞く習慣はありません。  ライブリポートはあくまで舞台上のパフォーマンスを伝えるもの。演者の思いやライブに対する感想は後日、改めて取材をするのが基本です。  それに対し私の本籍であるプロレス界では、試合が終わると選手を記者団が囲み、コメントを聞き出します。日刊紙は翌日に、専門誌の『週刊プロレス』では1週間ごとに記事やリポートを掲載する必要があるため、時間を置いて改めて取材したら間に合いません。  その感覚のまま純烈のライブを見ているので、自分が拾ったことをもとに話を聞きたいと思うのが自然でした。そして、プロレスが好きだからこそリーダーもその“間合い”を理解し、終演後の取材に応じてくれるのです。  おそらく、その間はバックステージコメントを出しているプロレスラーの気分に浸っているのでしょう。2019年6月のNHKホール単独公演、昨年の観客1人ライブ、年明けの有観客再開コンサートと、リーダーは疲れを見せることなくステージを降りて十数分後には語っていました。  時間が経って頭の中の整理が施されたものではなく、ステージ上の余韻が残った状態でにじみ出る言葉と感情だからこそ生々しい。2度目の紅白に出演した時の思いも、凱旋ライブの会場・東京お台場 大江戸温泉物語で夜中の2時に聞きました。  数時間前の煌びやかなステージで見た風景を、深夜帯に健康センターの畳の上で語るリーダーのふり幅と、バイタリティこそが“純烈力”なのでしょう。もちろんそれだけでなく、コロナ禍に見舞われる中で白川裕二郎さんが自分に課したプロ意識、小田井涼平さんの人を楽しませようとする姿勢、後上翔太さんのピンチでもポジティブにいける強さがあって、この運動体は周囲を巻き込んでいくほどの熱量を発揮しているのだと思います。

ネットニュースや週刊誌ではクローズアップされることのない、メンバー一人ひとりのパーソナルな思い

 ネットニュースや週刊誌ではクローズアップされることのない、メンバー一人ひとりのパーソナルな思いを掘り下げて世に知ってもらうのも、連載を続ける理由です。世界中の人々が、生きるために頑張ったのが2020年という特別な年でした。  ただ、頑張っただけでなく哀しいことも、涙を落としたこともあったはず。それは純烈も同じでした。  ファンと物理的に離れても気持ちでつながっていたのは、同じ境遇だからこそ伝えられる思いがあったから。その上で自分たちが動くことにより、生きていくための力をみんなに送りたい。  この本には、誰もが足掻(あが)いたコロナ時代においてエンターテインメントビジネスを成立させるためのスタンスと方法論が、純烈を通して語られています。これは2021年以後も活用されるはず。だからこそファンに限らずスポーツや映画、演劇などの表現ジャンルへ携わる方にも読んでいただきたいのです。  コロナ禍という未曽有の時代を迎えた2020年をエンターテインメントからの視点で解析し、進むべき指針を提示し後世に残す。それが書き手として最大のモチベーションとなりました。  ただ、一般的なビジネス書とテイストが違うのは、そこへ人肌のぬくもりがあること。それは純烈にとっての2020年が、いかにドラマティックで血の通った人間模様に満ちていたかの証明でもあります。  人と人のつながりが持ちづらくなり「距離が近いこと自体、悪いことのようになっていった」(本書にも掲載されているスーパー・ササダンゴ・マシンの言葉)時代において、人間が失ってはならぬ大切なものがなんなのか、そしてそれはどうすれば得られるのか。あなたにとっての2020年を行間に見いだし、純烈の物語と並行し読んでいただけたら書き手冥利に尽きます。  そして感じたことをツイッターや各販売サイトのレビューに書いていただければ、それが今後の連載を続けていく上での糧となります。純烈とともに、本書も愛してください。 【『純烈物語20-21』CONTENTS】 ★6・23東京お台場 大江戸温泉物語&11・5LINE CUBE SHIBUYA公演カラーグラビア ☆あなたにとっての2020年が、ここに在る――まえがきに代えて ★序章 2020年の紅白に向けてどこよりも早く動き出したグループ ☆第1章 嵐の前の余韻――2月27日までの純烈 ★第2章 コロナ禍の中で迎えた無観客の10周年 ☆第3章 白川、小田井、後上にとってのコロナとの内なる闘い ★第4章 純烈丸の乗組員たちが語る4人の実像 ☆第5章 「今やれること」と向き合う姿勢の先に ★「追記」という名のあとがき――サムソン宮本さんについて伝えたいこと
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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