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ダイソーで110円のミニギター、これってギターというよりウクレレじゃん

ウクレレの簡単なコードを学ぶ

 視聴したのは「ウクレレレッスンTV」というチャンネルのウクレレ初心者向けの動画だ。その講師によると、4つの簡単なコードを覚えるだけですぐに「スタンド・バイ・ミー」が弾けるようになるという。僕の大好きな曲である。  まずはCコード。1弦3フラット目を薬指で押さえ、動画の中の講師といっしょにポロンと弦を弾く。しかし、同じ「ポロン」でも講師の奏でる音と僕のとではまったく違う。講師の音にはハワイの温かな風を感じるのだが、僕のにはそれがまったくない。風が吹かないのだ。110円の玩具なので仕方ないのかもしれないが……。  続けてAm、Fのコードを学んでいく。難関は最後のG7コードだった。指で押さえるところが3ヶ所も密集している。しかも、そのときになって気付いたのだが、僕のミニギターはウクレレよりさらに一回りも小さい。そのため、弦を押さえる3本の指は満員電車に押し込まれたサラリーマンのようにぎゅうぎゅうになる。押さえるべきところだけを押さえるのがとてつもなく難しい。
G7コード

G7コードは難易度マックスだ

 それでも何度も練習を繰り返し、この4つのコードを続けて弾くと、なんとなく微かに「スタンド・バイ・ミー」に聞こえなくもない感じにはなった。

ひとりぼっちで泣いた夜

ミニギター

ミニギターで「スタンド・バイ・ミー」を弾く

 演奏しながら思い出すのは昔、ひとりぼっちで泣いた夜のこと。アパートの隣室からは深夜のラジオ番組の音がくぐもって聞こえてくる。しばらくしてそれはウッドベースの奏でる低音に変わる。「スタンド・バイ・ミー」のイントロである。  スタンド・バイ・ミー……。  僕の心が揺さぶられる。なにか大きな存在が僕に寄り添っていっしょに泣いてくれているかのようだった。そして不思議な温かさに包まれ、また涙が溢れ出すのである。  パラン、ポロン……。  僕はミニギターのそのチープな音色を、あの日、隣室のラジオから聞こえてきた「スタンド・バイ・ミー」の音色に重ね合わせていた。<取材・文/小林ていじ>
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【動画】110円のギターで「スタンド・バイ・ミー」を弾いてみた
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バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。

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