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報道されない“謎の死亡事件”。東京入管でもスリランカ人男性が急死していた

 先日、入管庁の収容施設のひとつである名古屋入管で、スリランカ人女性の収容者ウィシュマ・サンダマリさんが死亡したことが国会でも取り上げられている。  ウィシュマさんは留学生ビザが失効したことで、2020年8月に収容された。収容施設内で体調悪化に見舞われ、体重が20kg減り、全身の痛みを訴え、吐血した。しかし、ビタミン剤と痛み止めを処方されただけで実質的には放置され、2021年3月6日に亡くなった。

東京入管の収容施設で起きた、スリランカ人男性の死亡事件

 この痛ましい事件は各マスコミが取り上げている。筆者が伝えたいのは、それ以前に起きた、もう一つのスリランカ人の死亡事件だ。
写真を持つ息子のジョージさん

元気だった頃の父・ニクラスさん(左)と、頭部に傷を負ったニクラスさんの遺体(右)の写真を持つ息子のジョージさん

 7年前の2014年、東京出入国在留管理局(東京都港区。以下、東京入管)に収容されていたスリランカ人男性のニクラス・フェルナンドさんが“謎の死”を遂げた。それも収容されてからわずか5日後の死亡である。  2020年8月、共通の知人を通じてニクラスさんの息子のジョージさんから「どうしても話を聞いてほしい」との連絡があった。彼は父の死を今も納得できないでいる。  だが国賠訴訟などで裁判に訴えようにも、すでに時効の3年は過ぎている。せめて世間に知らしめたい……。その一念で筆者にコンタクトしてきたのだ。

政治的対立に巻き込まれ、殺害予告から逃れて来日

 ニクラス・フェルナンドさん、そして息子のジョージさんとその弟は、スリランカではUNP(United National Party。統一国民党)という、かつてはスリランカでの二大政党の一つだった党の支持者だった。  だが2014年、反UNPの関係者が自宅を急襲して、一家は暴行を受ける。同時に殺害予告も受けた。政治的な対立に巻き込まれたのだ。  2014年3月20日、身の危険を感じたジョージさんは日本大使館から観光ビザを取得し、妻と一緒に来日した。日本に来た理由をジョージさんはこう語る。 「スリランカで、申請してから1週間以内にビザを取れるのは日本だけです。できるだけ早い出国を望んでいたので日本を選びました」  来日から3週間後、ジョージさんは東京入管を訪れ、難民認定申請をした。そして「その結果が出るまで」ということで、就労可能な「特定活動(6か月ごとに更新)」という在留資格を得た。
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「入管職員に胸ぐらを掴まれ、帰国を強要された」
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ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄”~

非人道的な入管の実態を
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