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報道されない“謎の死亡事件”。東京入管でもスリランカ人男性が急死していた

亡くなったニクラスさんの額には傷があった

 9時半ころ、職員が部屋の窓から、ニクラスさんが手を洗うのを確認した。その後、うつ伏せで動かなくなったのを「就寝した」と思いこみ、声をかけずにその場を去った。  13時頃、ニクラスさんを心配したRさんが隔離室を訪れて声をかけるが、返事がない。そこでRさんは入室してニクラスさんに近づくと、大小便を垂れ流した状態だった。その体に手を触れると、すでに冷たくなっていた。そしてこの時、Rさんはニクラスさんの額にまるで壁にぶつけられたかのような傷があるのを見ている。  驚いたRさんはすぐに職員を呼んだ。  13時3分、職員が急行。AED装着や心臓マッサージなどの救命措置を行ったが効果はなく、13時20分に救急隊が到着。救急隊は13時44分にニクラスさんを東京都済生会中央病院に搬入した。そして、心臓マッサージや機関挿入による心肺蘇生が実施されたが、15時3分に死亡が確認された。

額の傷を、入管は「ストレッチャーが当たった」と説明

死体検案書。死因は急性心筋梗塞

死体検案書。死因は急性心筋梗塞。死亡確認時間の8時間前の発症と推測されている。ニクラスさんが胸の痛みを訴えたときである

 死の翌日、ニクラスさんを解剖した東京医科歯科大学の上村公一医師が作成した「死体検案書」によると、死因は「急性心筋梗塞」。その発症から死亡確認までは約8時間と推測されている。  死亡が確認されたのは15時3分。逆算すると、午前7時に心筋梗塞を発症していたことになる。これは「胸の痛み」を訴えた7時9分とほぼ一致する。  ジョージさんは、父の遺体が安置されていた湾岸警察署に行った。その遺体を見て驚いた。額に数か所、打撲を受けたような傷跡があったからだ。  警察は「入管から聞いた話だが」と伝えたのは、「病院から警察に運ばれる時、子どもが道路に飛び込んできて、そのときの急ブレーキでストレッチャーが額に当たった」との説明だった。しかし、ストレッチャーが当たるような場所なのかという疑問が残る。  ジョージさんは「おかしい。急ブレーキが本当だとしても、当たるのは『頭頂部』になる。額のはずはない」と思った。そして後日、Rさんに面会した時に「救急搬送される前にすでに傷があった」と聞いたのだ。 「父は暴行を受けていたのではないか?」  これがジョージさんのぬぐい切れない疑問だ。
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「裁判をしなければ、いいように考えてあげる」
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ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄”~

非人道的な入管の実態を
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