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猛毒ヒアリ、また東京にいた。60回刺された専門家に聞く“ヒアリとコロナ”

芝生や緑地など、人の生活圏に巣をつくる

村上:問題なのは、山や林の中に多く巣をつくるスズメバチと違って、ヒアリは芝生や緑地、畑など人の生活圏で巣をつくることです。公園で遊んでいる子どもが刺されるといったケースが多いんですよ。また、畑地にも巣をつくりますので、農作物を荒らしたり、家畜の牛を刺して牛乳の出が悪くなったり。こうした経済被害は決して小さな額に収まりません。
村上貴弘

アリの巣を食べる村上貴弘氏

――健康被害と経済被害ですね。 村上:繁殖力が強いので、在来の昆虫などに影響が及び、生物多様性が減って環境を変えてしまうことも問題です。それがめぐりめぐって農業被害に及ぶこともあります。 外来生物全般にいえることですが、環境の変動に強いというのもヒアリの特徴のひとつです。さすがに北海道は定着できないだろうといわれていますが、いったん、入ってきたら北関東・東北南部くらいまでは定着する可能性は十分にあります(アメリカでは年間5000億〜1兆円の経済被害が出ていると推計されています)。 ――福島県くらいまでは余裕なんですね。 村上:基本的には、熱帯由来のアリなのですが、地球温暖化の影響もあり、日本だと福島県周辺までは定着可能エリアだと推定されています。温暖化の影響だけではなく、ヒアリ自体が繁殖力が強く、環境変動への対応力もあり、そのうえ、引っ越し上手ですから。

モーターや車のトランクに入り込むことも

――引っ越し上手? 村上:あたたかいところが好きなので、建物内のモーターやトランスなどの電気設備の中に集団で入り込んだりします。アメリカのテキサスではヒアリが原因の停電や火事は頻繁にありました。たとえばヒアリのいる港に自家用車を駐車させておくと、2時間もあればトランクの中に入り込めるでしょうね。
ヒアリの特徴

ヒアリの特徴(働きアリ):環境省HP「ヒアリに関する情報」より

――車で自宅まで連れて帰ることになります。 村上:拡散は必ずしも、荷物や貨物のコンテナに限らないんですよ。その意味で、港湾の近くには長時間、車を駐車しないほうがいいかもしれませんね。
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新型コロナウイルスとヒアリの類似点
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