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ロスジェネ世代のそばに常にあるダイエットブームという呪縛と福音

 あらゆる年代の人がいる職場はまさに“世代のルツボ”。特に社会に出て間もない人にとって、過重労働が社会問題になっている時代にあって嬉々として“徹夜仕事”をしたり、なんでも電子化、レンタルできる世の中で“モノにこだわる”40代以上の世代は奇異に映るかもしれない。  社会の文脈的に“ロスト”されてきた世代は、日々どんなことを想い、令和を楽しもうとしているのか。貧乏クジ世代と揶揄されつつも、上の世代の生態をつぶさに観察し、折衝を繰り返してきたロスジェネ世代の筆者ふたりが解説していく。

中年太りは社会悪? ダイエットは最後の恋心を満たす魔法か

ダイエット

イラスト/押本達希

「『わき腹についた贅肉のこと、ラブハンドルって言うみたい。ほら、僕のわき腹もムニュ〜とつまめちゃう!』。 先日、妻にこんな風におちゃらけたら、ビー玉のような目つきで『デブ!』と一喝されて……。なんとも言えない気持ちになり、改めて会社の同僚たちを見渡してみたら、思いの外、中年太りしてない同世代が多くて。みんな、ちょっと意識高すぎじゃない? 男40も過ぎれば代謝が悪くなり、若い頃のような体型でいられなくなって当然。あれ、違う!?」(44歳・証券)  ステイホームを余儀なくされたコロナ禍、食生活の見直しや運動機会の創出など、生活習慣の改善に取り組む人が増えた気がします。40代男性の「健康意識が高まった(37.2%)」と実感する人のうち、約4割(37.1%)が「日常的に運動・スポーツを行なっている」という調査報告(出展:明治安田生命)からも明らかでしょう。

ダイエットの中心が女性たちだった時代

”不測の事態”とはいえ、身体に気を配る人が増えているのは喜ばしいことです。意識の差はあれ、ダイエットに励む男性が「右肩上がりで増加中」という見立ても成り立つ気がします。  レオタード姿で汗を流すエアロビクス、カカトのないスリッパ、ラップを全身に巻くラップダイエット……かつてダイエットに精をだす主人公といえば女性たちでした。筆者がまだ小さかった頃、世の中ではりんご、ゆで卵、紅茶きのこなど、偏ったものだけを食べ続ける、我慢するダイエットも大流行。いまにして思うと、飽食の時代の珍事をよく見聞きしたものでした。 「絶対きれいになってやる!」。1992年には失恋した女子がボクシングポーズでつぶやくエステのCMも話題に。1990年代頃まではダイエットという言葉の中心にいたのは”女性たち”でした。
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ダイエットを自分ゴトにした最初の世代
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数々の雑誌を渡り歩き、幅広く文筆業に携わるライター・紺谷宏之(discot)と、企業の広告を中心にクリエイティブディレクターとして活動する森川俊(SERIFF)による不惑のライティングユニット。 森川俊 クリエイティブディレクター/プロデューサー、クリエイティブオフィス・SERIFFの共同CEO/ファウンダー。ブランディング、戦略、広告からPRまで、コミュニケーションにまつわるあれこれを生業とする。日々の活動は、seriff.co.jpや、@SERIFF_officialにて。 紺谷宏之 編集者/ライター/多摩ボーイ、クリエイティブファーム・株式会社discot 代表。商業誌を中心に編集・ライターとして活動する傍ら、近年は広告制作にも企画から携わる。今春、&Childrenに特化したクリエイティブラボ・C-labを創設。日々の活動はFacebookにて。

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