「オタクはイベントがないと死ぬ」コスプレイヤーが語るコロナ禍のオタク事情
2年連続のコミックマーケット(以下、コミケ)開催中止により、勢いが失速しつつあるコスプレイヤー界隈。コミケ不開催はコスプレイヤーだけでなく、コミケ文化を盛り上げてきたオタクたちにも様々な影響を及ぼしている。オンラインを活用して趣味活動を続ける人がいる一方、「オンラインでは限界がある」との声も聞こえてくるようになった。
コスプレを10年以上続けてきた“ベテランコスプレイヤー”によると、「コロナ禍のオタクは完全に二極化している」のだとか。リアルな事情を語ってもらった。
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取材に応えてくれたのは、16歳からコスプレ活動をしている立花月華さん(30歳・Twitter:@tachibanateruyo)。
立花さんは「併せ(同じ作品のキャラ同士でコスプレすること)」がきっかけで現在の妻と出会い結婚。夫婦で毎年コミケに参加していた筋金入りのコスプレイヤーだ。
「子供が生まれる前までは、ほぼ毎週コスプレをしていました。夫婦で一緒にやる時もあれば、たまに分かれて……って感じで。途中からは同じ作品のコンビキャラを妻と一緒にやることが多かったです」
娘の誕生を機にコスプレ活動を一時休止。2019年の冬コミから夫婦揃って活動再開を予定していたという。
「2019年の冬コミの1日目と2日目に参加し、昔からの知り合いたちに復帰の挨拶をしました。去年の3月にずっと探していた衣装が運良く見つかったこともあり、完全復帰の準備をしていたところでコロナの流行です」
漫画『ブラックラグーン』の登場人物、バラライカが着用しているソビエト連邦の軍用コートを手に入れた立花さん。コスプレ用の模倣品でなく、本物のコートを長年探し続けていたそうだ。
「オークションでたまたま出回っていて、やっと購入できたんです。コロナが落ち着いたらバラライカコスをしようと計画していたんですが、最近はもう諦めムードですね。コロナが流行り始めたくらいの頃は、コスプレ仲間と宅飲みや宅コス会もやっていたんですよ。それも緊急事態宣言以降は無くなりました」
現在はたまに「宅コス」を楽しみながら、コスプレをしない一般参加でイベントを見に行っているという。宅コスやビデオ通話を利用した「オンライン併せ」は今やコスプレイヤーたちの間で日常となりつつあるが、ベテランレイヤーにとっては「うま味を感じられない」そうだ。
「今は加工で背景を合成できてしまうので、ひとつの作品を作りあげるって意味では宅コスでもどうにかなると思っています。でも僕たちが好きだったのは、コスプレという一文化なんですよね。イベントやスタジオでの人との交流が楽しかったので」
自宅でひとりコスプレをするだけなら、コロナ禍でも満足できただろう。しかし多くのレイヤーにとって、コスプレの醍醐味は他のレイヤーやカメラマンとの交流だ。こだわりが強いレイヤーほど、オンラインでは満足感が得られにくくなっている。
「コスプレは生で見せるからこそ良さが出るもの・イベントだからこそ出せるものってあると思うんです。『頑張ってこのパーツを作った』とか、『どこどこのメーカーの衣装を手に入れた』とか。そういった細やかなこだわりが、オンラインだと伝わらなくて評価されないんです」
オンラインならではのデメリットは他にもある。良くも悪くも「家でいつでもできる」からこそ、コスプレの準備が進まないのだ。
「コスプレって、普段は家でやらないようなことをやる趣味じゃないですか。洋服やウィッグを作ったり、メイクやポージングの練習をしたり。それって『何日までにやらなきゃいけない』って期限が決められていて、義務感があったからできたんだなって」
筆者が今まで取材したコスプレイヤーたちの中にも、立花さんと同じ意見を持つ人は多かった。筆者自身も元コスプレイヤーだが、期日が無く人前で写真撮影をするわけでもない宅コスは手を抜きがちであった。
お金を払ってスタジオやイベントで撮影する場合、絶対に手を抜けないという緊張感は確かに存在した。画面越しで細部をごまかせる・加工でどうとでもなるオンラインであれば、通常よりモチベーションが下がってしまうのは仕方ないだろう。
夫婦で毎年コミケに参加。復帰しようとした矢先で…
オンラインでは伝わらないコスプレの良さ
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0
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