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<純烈物語>映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』プロデューサーが語る「東映特撮46年の伝統”ジャー”の重み」<第112回>

「純烈ジャー」というまったく新しいヒーローを東映ビデオから生み出せる

 そうした空気があった上で中野と山本はタイミングをうかがい続けた。そして2020年2月に酒井へ話を持っていく。「映画をやりたい」と切り出された時は、ためらいも不安もまったくなく、その瞬間から「どうすれば面白くなるか」にしか頭はいかなかったという。  ムード歌謡グループとタッグを組むことで新たなビジネス展開ができる。何より「純烈ジャー」というまったく新しいヒーローを東映ビデオから生み出せるのに、中野はワクワクした。  製作委員会方式ではなく、東映ビデオが100%出資というのも社をあげての本腰であることがわかる。“戦隊をモチーフにしたもの”ではなく戦隊そのものへの挑戦……純烈も本気だが、こちらはこちらでマジだった。  それを如実に物語っているのが「純烈ジャー」というネーミング。戦隊マニアの間では「よく○○ジャーを名乗れたな」となる。  1975年の『秘密戦隊ゴレンジャー』から連綿と続くスーパー戦隊シリーズは、東映が世界に誇る確立されたひとつのジャンル。それ以外で“ジャー”を名乗るのは、通常ではあり得ない。中野も「基本はダメ」と断言する。 「いろいろ案はあったんです。たとえば“純烈マン”とかね。それを出し合った時に酒井君が『純烈ジャーがいい』と言った。ダメ元で聞いてみて、ダメだったらほかのを考えようと感じで持っていったんですが、最初は『ウーン……』でしたね」

東映に脈々と続く”ジャー”の重み

 その時は『騎士竜戦隊リュウソウジャー』や『魔進戦隊キラメイジャー』が放送されており、映画が公開される現在は『機界戦隊ゼンカイジャー』が現行の“ジャー”。東映本体はそれらのキャラクターを守る立場にあり、純烈ジャーを名乗ることによってどのような影響を及ぼすか検討する必要があった。  その結果、最終的にOKが出たのは異例中の異例と言える。ひとつは東映グループの会社がやることだからというのが大きかったし、中野が特撮関連で実績を重ねてきたのも信頼につながった。また、エグゼクティブプロデューサーとして名を連ねる塚田英明氏や佛田洋監督の協力もあった。  もしも純烈ジャーという名前でなかったら、この作品はまた違った受け取られ方をされていたはず。ジャストでベストなネーミングの裏には、長きに渡る歴史の壁をブチ破るほどの情熱があった。 「戦隊モノ、東映の特撮モノはお子さん向けに作られているわけですけど、純烈ジャーによって新たな世代に興味を持っていただき、さらに広いターゲットで東映の特撮モノを楽しんでもらえるようになったらいい。また、純烈ジャーきっかけにガオレンジャーやハリケンジャー、仮面ライダー龍騎といった過去にメンバーが出演した作品を見てもらい、東映作品を好きになっていただけたらという判断でした。  何よりも基本、現行作品のマイナスにはならないという判断で話を進めました。本当に前例のないことが実現してしまったわけですけど、それは酒井君のパワーだったり康平君のパワーだったり、皆さんのお力添え……まあ、タイミングですね。あとは、純烈が頑張っている姿を応援することによってみんなも頑張れる。彼らが世に出ていくことで喜べるし、一緒に成長していきたいと思えるので」  純烈を追い続けるなかで「応援することで自分も頑張れる」の言葉を何度聞いただろう。その思いが、東映という日本を代表する老舗会社の常識を覆した。  仮に純烈がスーパー戦隊シリーズ本編へ出演するのとでは、意味合いがまったく違う。それはそれでとてつもないことだが、今回は純烈ジャーというゼロからクリエイトされたヒーローが生まれたところに、大きな意義があるのだ。 (文中一部敬称略) 写真提供/東映ビデオ
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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