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秋の夜長に観るべき!超有名食品ブランドの「スタートアップ」を描いた傑作/明石ガクト

売り上げ1兆円超えブランドのスタートアップを描いた傑作

動画オーバードーズ

『ザ・フード~アメリカ巨大食品メーカー~』より

 朝食はエジソンの陰謀だから食べない派、ワンメディアの明石ガクトだ。  ケチャップ、シリアル、チョコレート。今日、スーパーで目にしないことはないこれらの食品が世の中に誕生したのは1900年代前半のアメリカ。産業革命で都市に労働者が集中したことで起きた食料不足のニーズに応えるために、大量生産で安定した品質を誇るメーカーが生まれ、その商品が大陸横断鉄道によりアメリカ中に行き渡ることによって全国ブランドという概念が生まれた。  ここまでは広告やマーケティングに携わった人なら誰もが聞いたことのある話だろう。『ザ・フード』は現在では1兆円を超える売り上げを持つ超有名食品ブランドがまだ「スタートアップ」の頃を描いた作品だ。  ドラマとドキュメンタリーを組み合わせた手法で、かつて挑戦者だった創業者たちが裏切りや災難(特に火事! 電気が普及する前だから)にあいながらも、不屈のマインドで復活し革新者となる。

いい人のままじゃ勝てないのが起業

 僕の特にお気に入りのエピソードは、マクドナルド兄弟が働かない従業員に嫌気が差してテニスコートにキッチンの図を描き飲食店の厨房を生産ラインへと進化させ、そしてその仕組みをタコベルやバーガーキングの創業者が学びに来ていたって話。当時のカオスな状況をよく表していて最高だ。  莫大な利益を生み出す源泉となるのは強いビジネスモデルであり、個人商店ではない。コーラやケンタッキーのレシピは今でも企業秘密だし、原料や製造のための機械、そして特許を独占することはこの作品に出てくる創業者のほぼすべてが行っていることだ。いい人のままじゃ勝てないのが起業なのだと改めて兜の緒を締めたくなった。  それにしてもコーラ・チョコレート・シリアル、どれもびっくりする量の砂糖を使うことで人々を虜にしているあたりに歴史を感じる。今や砂糖を使わない商品にこそチャンスがあり、変化している常識を敏感に嗅ぎ取った者が、後に成功を収め「自分はラッキーだっただけ」と語るのだ。 ●『ザ・フード~アメリカ巨大食品メーカー~』 向上心★★★★、道徳心★、闘争心★★★★★(5点満点) コカ・コーラやマクドナルドのような世界中で愛されるブランドの多くが20世紀初頭に生まれた理由が超わかる。秋の夜長は変なビジネス書読むよりこっちを観るべし。
’82年、静岡県生まれ。上智大学卒。’14年、ONE MEDIAを創業。近著に『動画の世紀 The STORY MAKERS』(NewsPicks Select)がある

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