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昨今の恋愛リアリティショーに一石を投じる『ラブ・イズ・ブラインド』/明石ガクト

「本当の自分を発見した」恋愛リアリティショーを見て思う、ダイバーシティの存在

動画オーバードーズ

『ラブ・イズ・ブラインド JAPAN』より

 声のトーンはしっかり低めな女性が大好きな明石ガクトだ。  いつからか上場企業のウェブサイトの中に「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉が登場し、性別、年齢、国籍、人種、民族、宗教……などなど、さまざまな多様性を互いに尊重し認め合うことが重要な時代になった。  そんな多様性で世界最先端を走るアメリカで生まれた番組が『ラブ・イズ・ブラインド』だ。  顔も姿も知らない相手に10日間の会話だけでプロポーズできるのか? 多様な肌の色や信条がある人々がせめぎ合うアメリカでは日本では想像もできないほどの量のバイアスが人間関係につきまとう。  ある参加者の「恋人を見つけにきたはずが、本当の自分を発見した」というフレーズに稲妻に打たれたような衝撃を受けた。  外見を含むさまざまなバイアスを一旦取り去った状態で始める恋愛は、むき出しの自分自身に向き合えるきっかけになるのかもしれない。

「盛ってない」本当の自分に向き合っていくミドリとワタル

 アメリカ版の後に日本版を視聴したが、こちらの参加者は基本的にアジア人で無宗教で、ブラインドの裏側に隠された要素はずっと少なくなっている。  それ故に個人のパーソナリティにぐっと踏み込んでいるのが特徴だ。なんというかビミョーな距離感の友人の、憧れも共感も感じない恋バナを聞かされてるような……特にミドリとワタル! 港区のレストランで一度くらい遭遇してそうなカップルで、最初はまるで応援できないと思ってたが回を重ねるごとに愛着が湧いてきて最後はもうなんだか親友になった気持ちよ。  参加者が、この企画を通して自身に向き合い「盛ってない」本当の自分に向き合っていく様子はリアリティショーに出演すること≒フォロワー数を増やすゲームになっている昨今の状況に一石を投じたと感じる。  ダイバーシティは目に見える形でも、目に見えない形でも存在していて、それを自分にインクルージョンしていけるかどうかが、いわゆる恋と愛の違いってやつなのかもしれないね。 ●『ラブ・イズ・ブラインド JAPAN 憧れ★、共感★、リアル★★★★★(5点満点) アメリカで人気のリアリティ番組の日本版!「恋愛リアリティショーを超越した、ある種の社会学的実験とも言えるコンテンツ。ポッドを出てからが本番」
’82年、静岡県生まれ。上智大学卒。’14年、ONE MEDIAを創業。近著に『動画の世紀 The STORY MAKERS』(NewsPicks Select)がある

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