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森田剛の男っぷりがカッコいい!“死なない喜び”を謳う映画/明石ガクト

最悪の日だって意味はある。新年の幕開けに嚙みしめた、まだ死んでいない喜び

動画オーバードーズ

『DEATH DAYS』より

 素直に輪になって踊れない青春時代を過ごしていた明石ガクトだ。  サンダンス国際映画祭、ベルリン国際映画祭の受賞作『ウィーアーリトルゾンビーズ』で知られる若き天才にして異端児、長久允。彼があの森田剛を主演に新作映画を撮った。  もうこれだけで筆を置いてもいいくらいの事件なのだが、この連載で紹介したい理由がある。なんとこの映画、ユーチューブで無料公開されているのである。海外では短編映画をネットで無料公開して、それで出資を募り長編映画に仕上げるという事例も出てきていたが、日本でこういった取り組みは非常に珍しい。

森田剛のぐしゃぐしゃでかっこいい大人の男っぷり

 肝心の映画の中身だが、まずは何はともあれ森田剛だ。あの少年のヤンチャな可愛さを、グツグツ煮詰めて冷やして固めたような存在だった彼も、もう40歳超。本作では、人間むき出しのぐしゃぐしゃでかっこいい大人の男っぷりを余すところなく見ることができる。  長久允は「人間の生死」と「音楽」を作品の根幹として度々扱ってきた。コロナ禍に封切りされた舞台『(死なない)憂国』では「生きてるってなんだろ? 生きてるってなあに?」と“生きる意味”を繰り返し問いかける曲を。この『DEATH DAYS』では「死んでない、死んでない、死んでない、やったねー!」と“死なない喜び”を謳う。  本作は紛れもない一本の短編映画だが、エピソードごとにそのトンマナは大きく異なる。喜劇・悲劇・群像劇。ユーチューブの小さな画面を一つの部屋に見立て、その中のさまざまな季節をこの映画は描いていく。  第1話はスマートフォンで。第2話はパソコンで。第3話はぜひリビングの大画面テレビで観てほしい。今日、死んでないことの喜びを感じられる作品だから。  君の新年の幕開けはどんなだった? それが最高だって最悪だって、今日というこの日を意味のあるものとしてやりきって生きる。その繰り返しだけが人生を前に進めていくんだぜ。今年は良かった、そんなふうに思える一年になることを祈って。 ●『DEATH DAYS 元気★、辛気★★★★、勇気★★★★★(5点満点) 「誰もが自分の命日(デスデイ)を知っている世界で、自分のデスデイを怯えながら生きる男のストーリー。森田剛ってこんなにいい役者なんだ!と膝を打っちゃうぜ」
’82年、静岡県生まれ。上智大学卒。’14年、ONE MEDIAを創業。近著に『動画の世紀 The STORY MAKERS』(NewsPicks Select)がある

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