仕事

300万円元手に400億円のスニーカー企業に。アトモス・本明CEO「転機は母の2時間の説教」

“履きやすさ”が次のスニーカートレンド

NIKEのスニーカー

NIKEのスニーカー人気は今後も揺るがないものだという

 原宿の一角で始まったスニーカービジネスは、時を超えてアメリカの小売大手企業の目に留まる。2021年にフットロッカー(Foot Locker)が、アトモスをおよそ400億円で買収したのだ。この買収劇が報道されるや、スニーカー業界やファッション業界に大きな衝撃を与えたのである。  ある種、ひとつの区切りとして捉えることもできるが、本明さんは「仕事が趣味なので、変わらずに面白いこと、人がやらないことをやっていきたい」と抱負を述べる。
スニーカー

写真左から「HOKA ONEONE KAWANA Blanc De Blanc/Butterfly 22SS-I」、「ON Cloudswift Black/Rock 21SS-I」

 また、この先も変化するであろうスニーカーのトレンドについても「これからは機能性が求められてくる」と本明さんは続ける。 「NIKEのスニーカー人気は当たり前になっていますが、今注目しているのはHOKAOnといった高機能かつ軽量のスニーカーです。というのも、世界的に高齢化が進んできており、年齢が上がるにつれて快適さや履き心地を求めるからです。ダウンジャケットが流行るのも同様の理由で、今後は健康を重視した価値観が広がってくると見立てています」

世にまだないものを徹底的に探せるかどうか

 25年前、スニーカーに活路を見出した本明さん。その審美眼は確かなものだった。  独自の才覚を持ちながらも、学ぶことを怠らない心構え。これこそ、本明さんの真骨頂とも言える。  毎日欠かさない朝早くからのウォーキング。行きつけのスタバでの読書。このルーティンを何十年も継続しているそうだ。  また、日本中の寺巡りをするのが趣味だそうで、集めた御朱印帳は10冊にも上るという。一見ビジネスには関係なさそうなことでも興味を持ち、見識を深めることで新たな発見につながることだろう。  そして、文学、小説、歴史書などさまざまな本を読むことで、自分の知らない世界や人の抱く心情に触れることができる。  取材をしていくなかで、本明さんの引き出しの多さに感服してしまった。そんな本明さんに、商売繁盛のコツについて最後に聞いてみた。 「また、“世にまだないもの”を徹底的に探すこと。ないものが欲しくなるのが人の心理です。逆を言えば、自分が好きなものを売ると事業は伸びていきません。自己満足で終わってしまうからです。ブームの本質はどこにあるのか、売れる根本は何かというのを考え、いかに“仕組み”を作れるかが肝になってくるでしょう。そのためにはいろいろなことに興味を持ち、勉強をし、教養を広げることが大切になります。まずは感度を高く持ち、知ろうとすること。学んでみることから、実践してみるといいのではないでしょうか」 <取材・文/古田島大介>
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ