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ウクライナがロシアに降伏すべきでない理由/倉山満

「ウクライナはさっさと降伏しろ」と言い出す御仁がいる

 ロシアがウクライナに侵攻した。ウクライナは激しく抵抗し、双方の犠牲者が増大している。特に国土が戦場となったウクライナでは多くの民間人が死傷し、女子供老人は避難民として生まれ育った故郷を捨てて逃げざるを得ない。
ウクライナ

ポーランド南東部、国境近くの街の学校に設けられたウクライナ難民の避難所。国連難民高等弁務官事務所によると、国外に逃れた難民は3月30日時点で405万人余に上る 写真/AFP=時事

 一部には留まる人もいる。まだ戦場になっていない土地の人々だけではない。当たり前だが、避難民となるには、今までの生活も、財産も捨て、持てるものだけを持って逃げるしかない。悲惨な光景だ。  こうした悲惨さをやめさせる為に、「ウクライナはさっさと降伏しろ」と言い出す御仁がいる。その手合いがロシア大統領のウラジーミル・プーチンにモノ申したという話は聞かないのは不思議なことだ。  学校でたとえよう。いつも揉め事を起こしている者どうしが喧嘩を始めた。どうやら背が高くて力が強くて金を持っていてずる賢い方が「お前は生意気だ」と殴りかかったらしい。誰も止めない。しかし、小柄な方は必死に耐えて、時に殴り返している。その小柄な生徒が一切の抵抗をやめて謝れば、許してもらえるのか? 考えるまでも無い。日本でいじめ問題が後を絶たないはずだ。

殴り返さない方が偉いという愚かな価値観

 日本国憲法に毒された愚かな価値観がある。「どんなに殴られても殴り返さない方が偉い」。バカか?  思い出しても見よ。なぜ日本が世界で唯一の被爆国か。第二次大戦末期、日本の敗色は濃厚だった。連合国は既に戦後秩序を見据え、アメリカ・ソ連・イギリス・フランス・中国を五大国とする新秩序が形成されつつあった。そんな中で、原爆投下は行われた。非人道兵器である原爆の使用、しかも先制使用は、議論の余地なく国際法違反である。さらに、軍事目標と区別しない都市への無差別爆撃による非戦闘員の殺傷からして、国際法違反である。軍事的には何の意味も無い殺戮である。  ところが、アメリカの所業は国際法違反とされなかった。なぜか。どこからも抗議が来ないからだ。
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長きに渡った占領で精神的に去勢された日本
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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