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ウクライナがロシアに降伏すべきでない理由/倉山満

九条は精神的に去勢された成れの果て

 五大国は全員がアメリカの同盟国なので、アメリカの悪行を咎めだてはしない。何より、日本に抵抗力が無かった。都市への無差別空襲と非人道的兵器の使用によって、日本は連合国のポツダム宣言を受け容れざるをえず、降伏を余儀なくされた。本当は有条件降伏だったが、軍隊が武装解除され、アメリカ以下連合国のポツダム宣言その他国際法への違反を制裁する力を無くしていた。  そして、長きに渡った占領により、アメリカ以下連合国の国際法違反を訴える力さえ奪われた。いつのまにか洗脳、精神的に去勢されてしまったのだ。その成れの果てが、九条に代表される日本国憲法の精神、「どんなに殴られても殴り返してはならない」だ。この思想がどれほどの無辜の民を苦しめてきたか。  教育現場ならば、教師がなすべきは何か。絶対にやってはならないことは、「殴られても絶対に殴り返すな」ではなく、「自分の身は自分で守れ。ただし、過剰防衛はよろしくない」だ。そもそも、「挑発もされないのに、先に手を出すな」を叩きこむべきだ。そしていざ諍いが発生したら、ただちに割って入って殴り合いをやめさせる。その上で、原因がなんであったかの真相を究明する。悪いのは先に殴った方ではない。挑発し、原因を作った方だ。「どんなに殴られても殴り返してはならない」は、何の解決にもならない。

「プーチンを権力の座に留まらせない」発言のポンコツさ

 余談だが、最近アメリカで、妻を侮辱された俳優が、侮辱したコメディアンを平手で殴った。「先に殴った方が問答無用で悪い」にはならない。殴られたコメディアンの方が、明らかに「挑発」をしたからだ。しかも平手を一発だけだったので、過剰防衛ではないとも言える。  この原理は、国際法も同じである。現在、ロシアは侵略(aggression。前回の「宣戦布告がないのに、軍事衝突はある。これは紛争か、戦争か」で解説の通り、正確には侵攻)を行ったと国際社会から批判されている。侵攻とは、挑発もされないのに、先制武力攻撃を行うことだ。プーチンは色々と言い訳をして「ウクライナが先に挑発してきた」と言っているが、国際社会の圧倒的多数は「それは挑発と認められない」と評価している。  一方で、アメリカのジョー・バイデン大統領も相当のポンコツだ。ポーランドに行ってロシアの国際法違反を片っ端からあげつらうまでは良かったが、「プーチンを権力の座に留まらせない」とまで発言した。さすがに同盟国の英仏が「我々は知らん」「いい加減にしろ」と呆れられていたが、アメリカ政府の高官も火消しに必死だった。  それはそうだろう。プーチンを「挑発もされないのに手を出した」と批判しているのに、バイデンがプーチンを挑発してどうする?
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ウクライナがロシアに降伏して、何かいいことがあるのか?
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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