エンタメ

パチスロ名機「ニューパルサー」を愛しすぎる、ニューパルおじさんとの邂逅

都市伝説のように語られていた「ニューパルおじさん」の存在

pato

写真はイメージです

 僕が19歳くらいの頃だったと思う。そんなニューパルサーフィーバーも落ち着きを取り戻し、下火になり始めたころ、ニューパルおじさんの噂をきいた。    ニューパルおじさんとは文字通り、ニューパルサー好きのおじさんのことだ。当時はみんなニューパルサーのことをニューパルと省略して読んでいた。噂によるとニューパルおじさんはニューパルサーが好きすぎるあまり、ちょっと別のステージに行ってしまったみたいなおじさんだった。  この市内のどこかに生息しており、とにかくニューパルサーが大好き。大雑把に言ってしまうとそれがニューパルおじさんの生態だった。そういった噂が都市伝説のように流れ、さすがにそれは嘘だろみたいな尾ひれがつくようになっていた。  とにかく当時は僕らの間ではニューパルおじさんの話題で持ちきりだった。以下に、実際に僕がきいたニューパルおじさんの噂を列記する。 ・常にニューパルを打っている。朝から晩まで打っている  それはまあ、ニューパルおじさんというくらいだからそれくらいは当然だろう。ニューパルおじさんが他の機種に夢中になっているほうが嫌だ。 ・ニューパルが好きすぎるあまりリーチ目をすべて暗記している  当時のスロットには「リーチ目」というものが存在した。簡単に言うと「いまボーナスが揃う状態だぞ、狙ってみろ」と教えてくれる出目だ。ニューパルはそのリーチ目が膨大な種類であることが売りだった。分かりやすいものかマニアックなものまでその膨大な数をニューパルおじさんは暗記していると言われていた。まあ、これはニューパル好きならありえない話ではない。 ・ニューパルが好きすぎるあまり、リーチ目が分からない他の客を一喝する  全てを暗記しているので、リーチ目に気付かずに打っている他の客が気に入らないらしく、めちゃくちゃ怒る。まあ、これもわかる。まったくもって迷惑な話だけど、当時はこういう客がけっこういた。怒るまでもいかないけど「それリーチ目だよ」と教えたがりのおっさんが多かったのだ。

そんなヤツおらんだろ

・ニューパルが好きすぎるあまり台を撫でながら打つ  台の横の部分を優しく愛撫するように撫でるらしい。まあ、これもわからんでもない。決してありえない話ではない。 ・よく行く店のニューパルに名前を付けている。  太郎とか隼人とか台ごとに名前をつけていて、昨日は隼人の調子が良かったとか言っているらしい。まあ……わからんでも、ない。 ・ニューパルが好きすぎるあまり、ボーナスが揃ったときに自作の歌を唄う  このへんからちょっと怪しくなってくる。さすがにそんなやつおらんだろうみたいな噂が混じってくる。さすがにそんなやつおらんだろ。 ・ニューパルが好きすぎるあまり、腕に「ニューパル」と彫ってある  さすがにそんなやつおらんだろ。 ・ニューパルが好きすぎるあまりすべての言葉の語尾に「ニューパル」がつく  絶対にそんなやついない。  最後の3つの伝説はたぶん尾ひれがついた嘘の伝説だと思う。絶対にそんなやついない。いるわけないだろ、語尾がニューパルのヤツ。
次のページ
そこから、ニューパルおじさんの大捜索が始まった
1
2
3
4
5
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


記事一覧へ
おすすめ記事