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ウクライナでの事変は対岸の火事ではない。最後の猶予期間だ/倉山満

無抵抗を貫いていたら、何をされても文句は言えない

言論ストロングスタイル

拷問され死亡したとみられる市民が数百人発見された、首都キーウ(キエフ)近郊のブチャ。ロシアはこうした拷問やレイプについて、西側諸国によるでっち上げだと主張している 写真/EPA=時事

 その昔、正論を吐いて更迭された防衛政務次官がいた。今は政務官だが、当時は政務次官と呼ばれていた。まあそれはいい。  曰く、「お前が強姦されとってもオレは絶対に救ったらんぞ」と。  要するに、そんなに憲法九条を守って無抵抗を貫きたいのなら、何をされても文句を言えないが、それでいいのか、と護憲派の女性議員に言いたかったらしい。中身は正論だが、20世紀末の世論が許してくれるはずがない。日本中から袋叩きにされてクビになった。  何を下品な表現をと思う向きもあるかもしれない。しかし、この発言がなされた’90年代は、「戦場レイプ」が深刻な国際問題と化していた。特に注目されたのは解体過程にあった旧ユーゴスラビア連邦。約10年に渡り三勢力が抗争する民族紛争が激化、「民族浄化」と呼ばれる多くの悲劇が生まれた。

国際法は「全員が守る訳がない」との前提で作られている

 その中でとりわけ悲惨だったのが「強姦収容所」だ。敵対民族の女性を拉致する。輪姦して妊娠させる。監禁して、中絶が不能になってから、元のコミュニティーに返す。民族憎悪が招いた悲劇だ。  言い訳不能の国際法違反であり、戦時においても絶対にやってはならない犯罪だ。しかし、国際法は戦場で頭に血がのぼった人間にもわかるように、「これくらいのことは守れよ。後でバレたら犯罪者として処罰されるぞ」と作られた規範だ。当然、「全員が守る訳がない」との前提で作られている。  結局のところ、法を守らせるのは力なのだ。国内においても、警察の力が及ばない犯罪者は逃げおおせる。ましてや、戦場においてや。  だから件の防衛政務次官氏曰く、「日本男児の使命は、大和撫子を強姦魔から守ることだ!」と述べたのだが、今のロシアの所業を見て何も感じないか。  ロシアは国際法違反の常習犯だ。我が国も敗戦時の裏切りによって、男は拉致されて極寒のシベリアで奴隷労働、女は強姦により自殺と中絶が大量発生した。今また、ウクライナで同じような悲劇が発生していると伝えられる。

まずは相手方そして自分の戦力を確かめること

 国防力強化は、急務だ。ロシアがあちらで足をとられている間に守りを固めねば、何をされるかわからないと覚悟せねば。  敗戦時、既に兵も武器も失っていた日本軍は、女子供を逃がすために「アンパン突撃」と呼ばれる悲惨な戦法を敢行した。アンパンとは地雷のこと。地雷を抱いて戦車に体当たりしたのだ。少しでも女子供を逃がすために。こうなるのが嫌なら、こうなる前になんとかせねば。  そうは言っても、武力を蓄えるのには時間がかかるし、それを裏付ける財力も必要だ。だが、知力の増強は、今すぐ実行できる。覚悟くらいは今すぐできるし、「何をすれば殺されないか」の勉強を始めるのもやる気次第だ。  まずは彼我の戦力を確かめること。特に、相手が何者かを見極める意思を持つことだ。
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