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「もう海外旅行は余裕」ってホント?PCR検査にまつわるトラブルが多発中

政府指定のPCR検査「所定フォーマット」で混乱、空港スタッフの負担にも

空港 やっと病院での検査が完了しても、まだ安心はできない。日本への帰国時にはPCR検査での陰性証明書を航空会社のカウンターで提示する必要があるが、この証明書には日本政府が定める「所定フォーマット」がある。  厚労省のホームページによると、「所定のフォーマットを使用することが困難な場合には、任意のフォーマットの提出も妨げられませんが、(編集部注・検査方式や検査日時などの)『検査証明書へ記載すべき内容』が満たされている必要があります」とのことで、必ずしも所定フォーマットでなければならないこともなさそうだが、帰国時に実際にトラブルに巻き込まれた前出Aさんはこう振り返る。 「空港のカウンターで英文証明書を見せたところ、航空会社の現地スタッフが急に戸惑い始めて同僚数人と何やら話し込み始めたのです。それで『日本政府の所定フォーマットのものはないんですか?』としきりに確認してくるので、必要な要素はその証明書に書いているから必要ないと説明したところ、深夜にもかかわらず『検査方式の単語が一つ抜けているのが不安なので、実際にどのような検査だったのか病院に電話で確認したい』と言い出すなど、明らかにパニくり始めたのです。  最終的に『飛行機には乗せられますが日本に帰国してからトラブルに遭っても弊社に責任はないという念書にサインしてほしい』と言われ、仕方ないのでサインしましたが、必要かどうか怪しいフォーマットのせいで楽しい旅の最後に不快な思いをしたのは残念でした」(Aさん)  Aさんの例から分かるように、所定フォーマット通りでないといけないと真面目に思い悩み、無駄なストレスを抱える旅行者もいるはずだ。カウンターの職員も確認作業が負担になっているという。

コロナ感染防止アプリのダウンロード、入国時のファストトラック申請などスマホ操作も難関

 現在、世界各国ではコロナ感染防止アプリのダウンロードが入国時の必須要件として求められるケースが多い。マレーシアの「Mysejahatera」、インドネシアの「PeduliLindungi」などがその例だ。入国前にこのアプリに日本で受けたワクチン接種証明書をアップロードし審査を受ける必要がある国もあり、この作業には1週間ほどかかることもある。5月以降は世界的にコロナ感染防止対策は緩和傾向にあるものの、このアプリがないと飲食店などに入れない可能性もあるため、注意が必要だ。  また、日本帰国時に検査証明書のチェックなどを事前申請で省略するファストトラックもあるが、こちらもアプリをダウンロードして証明書をアップロードするなどの準備が必要となる。ファストトラックを利用しなかった場合、現地でいちいち書類をチェックしなければならないため、場合によっては長蛇の列に並ばなければならず、大きな時間のロスにつながる。    本稿で見てきた通り、大多数の日本人旅行者にとって、個人旅行はまだまだハードルが高い。世界的に渡航規制が撤廃されない限り、しばらくは団体旅行が無難な状況が続きそうだ。「個人旅行者の中年男性がベトナムの空港カウンターで書類不備で航空会社の20代の女性スタッフから10回以上舌打ちされながら途方に暮れていた」(前出Aさん)というような目に遭わないためにも、旅行の際にはしっかりとした情報収集や危機管理が必要となるのは間違いない。 <取材・文/竹谷栄哉>
フリージャーナリスト。食の安全保障、証券市場をはじめ、幅広い分野をカバー。Twitterアカウントは、@eiyatt.takeya
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