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ミュージシャンが薬物にハマる理由は?鎮痛剤が依存の「入口」になるケースも

世界的バンドのボーカルが薬物依存治療へ

「Walk This Way」や「I Don’t Want to Miss a Thing」などの大ヒットで知られるエアロスミス。ボーカリストのスティーヴン・タイラーが薬物依存の治療のためリハビリ施設に入り、ラスベガス公演の中止を余儀なくされました。  1988年にも強制的に入院させられたことがあるタイラーですが、再び加療を要する状態にまで悪化したようです。  公式ツイッターによると、「長年、薬物から離れていたが、ステージに立つために足の手術を受けたことで、痛みに対処するため、最近になって依存症が再発してしまった。」(東スポWeb 5月25日配信記事より)とのことで、一部の海外ファンの間では、鎮痛剤として用いられるフェンタニルなどの合成オピオイドなのではないかとささやかれています。  ロックといえばコカインやマリファナかと思いきや、ここへきて耳慣れない名前が登場してきています。一体何が起きているのでしょうか?

ミュージシャンとドラッグの関係

 まずミュージシャンとドラッグの関係について簡単に振り返っておきましょう。  かつては、ハイになったりリラックスしたりしたいなどの快楽目的の他には、作曲やサウンドメイキングの可能性を広げるために使われていました。  当のスティーヴン・タイラーも、1988年のときにはドラッグと名のつくものなら何でもウェルカム。ヘロイン、コカイン、バリウムのちゃんぽん状態で、「とにかくぶっ飛びたかったんだ。結果、深みにハマってしまった」(『People.com』2022年5月24日配信記事より 筆者訳)と語っていました。  時代をさかのぼって、60年代のビートルズもLSDなどの幻覚剤の力を借りて、新たな創造性を得ました。名盤『Revolver』はドラッグカルチャーなしに語れません。  ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Heroin」や「I’m Waiting For The Man」などの名曲も、薬物中毒やブツの売買のことを実験的なアレンジと演奏スタイルで歌っています。  退廃的な歌詞と挑発的な音楽性。いずれも薬物のもたらす超越的な感性から生まれたと言って差し支えないでしょう。(註・のちに元メンバーのルー・リードは、「ドラッグ。俺はやめた。君たちもやめとけ」と語っています。)
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近年のアメリカ音楽業界を襲うドラッグ問題
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