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ミュージシャンが薬物にハマる理由は?鎮痛剤が依存の「入口」になるケースも

アーティストがドラッグに頼る心理

 
ミュージシャン

写真はイメージです

 どうして昔のミュージシャンはクスリにハマっていったのでしょう? 今はクリーンになったビーチボーイズのブライアン・ウィルソンは、アーティストが薬物に期待する効果とそれに頼る心理を、こう分析しています。 「作家とか脚本家とか、クリエイターの多くは仕事のスピードアップや、作品に関して壮大なビジョンを得るために、カフェインやアンフェタミン(覚醒剤の一種)を使うんだ」(『SONGWRITERS ON SONGWRITING』 Paul Zollo Da Capo Press edition 2003 p.128 筆者訳)  洋楽を聴く日本人が抱くドラッグのイメージも、だいたいこんな感じですよね。

近年のアメリカ音楽業界を襲うドラッグ問題

 ところが、今回スティーヴン・タイラーのケースでも明らかになったように、近年のアメリカ音楽業界を襲うドラッグ問題は様相が異なってきています。  2016年のプリンス、そして2017年のトム・ペティ。いずれも多量の鎮痛剤を摂取し続けたことにより亡くなったとの説が濃厚なのです。二人とも慢性的な体の痛みに苦しんでいました。  特にトム・ペティについては、驚くべき証言が。ヘロインより30から50倍も強いフェンタニルと呼ばれる合成オピオイドに加え、ヤミで取引されるレベルの薬物にしかないヤバい成分も遺体から検出されたといいます。  プリンスも、長年の激しいステージングにより臀部の痛みを抱えていました。ピアノやスピーカーにジャンプして乗るなどのアクションを続けた結果、体が悲鳴をあげます。オキシコドンに依存するようになってしまったのです。 (『Rolling Stone』2018年6月20日配信記事より 筆者により訳・要約)  そして最終的には、遺体から極めて高濃度のフェンタニルが検出されるほどに薬漬けになっていました。(註・プリンス本人はそんなに強い薬剤を処方されていたことを知らなかったとの一部報道もあります。)  つまり、スティーヴン・タイラーも彼らと同じパターンの依存状態におちいってしまったのですね。昔のように快楽におぼれるのではなく、プロとしてステージに立つための命綱が恐ろしい魔物だった。
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鎮痛剤依存の恐ろしさ
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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