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話の通じないおっさんの、頭の中は一体どうなっているのか? 謎が今解き明かされる

一体何を言っているのかわからない松田さん

「よう久しぶり!」  ここWINSで松田さんに会うのも久々だった。松田さんはその懐かしい顔を見せるや否や、急に意味不明なことを言いだした。 「なあ、元傭兵って平面的だよな」  しばらく会わない間に狂った?
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平面的な傭兵? 一体何を言っているんだ

 意味不明どころか、その思考を探る手掛かりすら掴めそうにない。元傭兵が平面的。ちょっと内容が支離滅裂すぎる。サルが勝手にキーボードを打って出てきた文章です、と言われても信じてしまいそうな意味不明な言葉がそこにあった。  これも完全に意味不明で支離滅裂なのだけど、結果から入っているからである。過程を辿ればこの言葉も理解できるのである。それでは松田さんはどのような思考を辿ったのか。順番に紐解いていこう。  松田さんにはいつも一緒にWINSにいく上川さんという親友のおっさんがいる。この上川さんが、まあまあ松田さんのことをことあるごとに煽ってくる。  コロナ禍によって仕事がテレワークとなった上川さんは、松田さんに対して「テレワークはいいぞー」「サボり放題だ」「俺たちは自由だ」「俺たちはテレワークをするために生まれてきた」「テレワークこそ人類のあるべき姿」みたいな感じで煽りまくっていた。  松田さんはその言葉を真に受けて、なんとか会社に交渉を重ね、部分的ではあるものの、テレワークを導入するところまでこぎつけた。  しかしながら、松田さんの会社はなかなか厳しい体制をとっているようで、たとえテレワークであっても常時、カメラをオンにして監視されているらしく、普通にオフィスで働いているほうがサボれたと嘆く状態になってしまった。

松田さんがテレワークで取った奇策

 それを上川さんに相談したところ、身代わりのパネルを置いたらどうだと提案されたそうなのだ。松田さんの写真を何枚かに分けて等身大でプリントアウトし貼り合わせる。それを発泡スチロールの板に張り付けてカメラの前に置くというものだった。松田さんは言われるがままに作った。夜なべして作った。  完成した身代わりパネルは実に平面的で光沢があり、笑顔のまま張り付いている松田さんの表情がなんとも気味悪いものだった。これをカメラの前に置いたら一発でバレる、そう評価するしかないものだった。 「もう映画SPEEDのクライマックスみたいに映像を切り替えてループで見せるしかないだろ」  また上川さんがてきとうな感じでアドバイスする。監視カメラをハックしてバス内を監視するテロリストを騙すために、ダミーのループ映像を監視カメラに流し込む。映画SPEEDのクライマックスシーンだ。 「はい、やってみます。明日、試してみます」  松田さんはそう答えるけど、そこまでスキルがあるようには思えない。 「いやー、これでテレワークも安心だ」  先が見えてきたのか、松田さん満面の笑みでそう口にしたらしい。上川さんいわく、やけに平面的なあのパネルと同じ表情だったらしい。 「そもそも、なんでテレワークって言うんでしょうね。テレフォンを使ったワーク? でも電話は使わないし、なんかインターネットとかに電話を使っていた時代の古い言葉なんですかね」  松田さんの言葉に上川さんはすぐに答えた。 「いやいや、テレワークのテレは、電話のテレではないよ。まあ、電話のテレでもあるんだけど、そもそもは、ギリシャ語のtele(遠く)という意味だよ」 「へえー、そうなんだ」
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上川さんの巧妙な言い回しに騙される松田さん
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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