仕事

「街の青果店」から業界人も注目の店に。転機はサーフィン仲間の叱咤激励

フルーツを五感で表現するイベントを企画

フタバフルーツ

都立家政駅の近くに構えるフタバフルーツ。2021年には創業80周年を迎えた

 しかし、フルーツの消費量が年々下降線をたどるなか、ただフルーツを販売するだけでは周りのスーパーや小売店と変わらない。そこで思いついたのが「イベントを企画し、フルーツを食べる機会を作ればいい」ということだった。 「フタバフルーツが仕入れた旬なフルーツを、好きなだけ食べられる『フルーツパーティー』をやろうと考えました。フルーツの彩りを目で見て、香りを感じ、口に入れて味わってもらって。それに音楽をプラスすることで、フルーツを五感で表現することを意識しました。当時、このようなコンセプトのパーティーはなかったので、結構な反響がありましたね。  幸いにも、自分の周りにはサーフィン仲間がいたので、面白そうな企画は『いいね、それやってみようか』と積極的に取り入れることができました。音楽だとDJやライブパフォーマンス、あとはサーフィンの映像も流したりしていましたね」

口コミが広がり、ケータリングの仕事も増加

@futabafruits

フルーツケータリングの様子。写真はインスタグラム(@futabafruits)より

 まずはフルーツの魅力を知ってもらおうと、毎月1回の開催を1年間続けたという。  そして、イベントを始めてから3年目の2009年ごろに、フルーツパーティーとして魅せられる完成度まで引き上げることができたのが「ひとつのターニングポイントになっている」と成瀬さんは言う。 「フルーツを中心にして、人と人との輪が自然と広がっていくのを感じました。お客さんがお客さんを呼ぶような形で、横ノリ系の人からアート、アパレル関係の人まで、口コミで多種多様な人が集まるコミュニティが自然とできていったんです。そんな折、『うちの展示会やレセプションでフルーツのケータリングを出したい』という依頼も次第に増えていきました。  ハイブランドや著名アーティストの展示会など、いろんな現場に行かせてもらいましたが、やはり華やかなところにフルーツは似合うなって。そう感じる場面はとても多くありました。フルーツがあるだけで、人を喜ばせ、笑顔にさせることができる。ケータリングをやればやるほど、それが確信に変わっていったんです」
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青果店が抱える葛藤
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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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